化粧品研究職に就いて9年、自分から進んでセミナーに参加したり、専門誌を読んでいますが、それでもまだまだ知らないことが沢山あります。
セミナーに行って、専門誌を読んで知った原料をすべて研究しているわけではなく、その中で興味を持った原料だけを研究しているのですが、セミナーなどで知るたびに研究したい原料が増えていきます。化粧品は実際に使ったときの評価が大切なので、そういうテストをしていると、今手元には研究したい原料だけでも1年分溜まっています。
良さそうな原料が見つかれば、更に深堀りしていくので、深堀していけば今手元にある原料の検討だけで1年以上かかるでしょう。
その1年も良いと思えるものがなければ、それでおしまいです。
成果は「これらの原料は現在使用しているものよりも良くなかった。」というデータが取れて終わりです。
そしてまたセミナーに行き、専門誌を読み、新たな原料を研究します。
1年もすれば学年が上がったり、上の階級の資格が取れたりする学校の制度で育つと、1年間の研究した成果が「どれもイマイチ。」なんて目に見えて成長出来ていないように見えるでしょう。
何が面白いのだろうと思うかもしれませんが、僕は成長とは学年が上がることでも資格を取ることでもなく、沢山の経験して、そこに知識を合わせて理解を深めていくものだと思っています。
なので「どれもイマイチ。」は日常茶飯事ですが、それは非常に勉強になりますし、これが結構楽しいのです。
生物学に興味をもち、大学は細胞生物学を選考していました。
大学の研究は部分的過ぎて、自分にはあまり興味が持てませんでしたが、化粧品の研究をしている今でも化学の視点ではなく生物学の視点で研究をしているなと感じています。
大手の化粧品会社の創業を見てみると、薬学出身の人で薬局からの派生です。実際には今でも古い薬局には大手の化粧品のポスターが貼られていたりしますので、化粧品は化学の視点で語られることが多いです。原料紹介も化学的な視点で、「これを何%配合すれば、こういう結果が出る。」といった西洋の薬のデータに近いような資料が出てきます。
大抵の場合、薬を飲むときは体調が悪いからだと思います。
発熱があって病院へ行き、薬をもらう。
花粉症で鼻詰まりや目の充血がひどく、病院へ行って薬をもらう。
というふうに、何か症状があるから病院へ行き、薬をもらいます。
西洋の薬は熱を下げるとか、炎症を抑えるとか、咳を止めるといった対処療法です。
それはつまり、「目の前のツライ部分は無くしたから、後は自分の力で健康になってね。」ということでしょう。
なので僕は西洋の薬を長期服用することに違和感があります。
これは化粧品とは違います。
化粧品は対処療法ではなく、予防です。
薬機法に“化粧品とは人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚もしくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされているもので、人体に対する作用が緩和なものをいう”と定義されています。
“すこやかに保つ”とあるように、保つわけですから、化粧品は対処療法ではなく予防であると考えられます。
“容貌を変え”とは、メイクのことを指しています。
メイクは対処療法ではないかと思うかもしれませんが、療法ではありません。
“身だしなみ・マナー”と考える人が多く、「嫌な先入観だな。」と思います。
僕はメイクはしたい人がすれば良く、その時の服装に合わせるなど“遊び”のように考える人が増えたらいいなと思っています。
今は“身だしなみ・マナー”と考える人が多いですが、観るメディアが分散されていっている今、メイクは“身だしなみ・マナー”であると考える人も減っていくと予想しています。
スキンケアは毎日使うものですから、対処療法では困るでしょう。
対処療法では対処するものが治った場合は使わなくなりますから、“すこやかに保つ”事はできません。
“保つ”ことを考えるのであれば、化学の視点だけではなく身体の方、生物の視点が必要となります。
それはターンオーバーの周期とか、ニキビができる原因とか、肌ことだけではダメです。
例えばニキビの原因は沢山あります。ニキビ肌にはさっぱり系のスキンケアと言われていますが、乾燥肌でニキビができることもあります。乾燥肌なのにさっぱりさせる為にアルコールの含んだスキンケアを使うと余計に乾燥してしまいます。
最近ではニキビ肌でも保湿をするのが良いと、今までとは真反対の言葉が出てきていますが、脂性肌の人がニキビになるように、保湿をすると悪化することもあるでしょう。
肌のトラブルを肌だけで考えると対処療法と同じような考えになってしまいます。
生物学の視点で、また大学の研究のような視点ではなく、大きくざっくりみないといけないです。
ニキビの話だと、アクネ菌がどーのこーのは肌の表面ではなく、奥の方の話です。
スキンケアは肌表面を“すこやかに保つ”為のケアです。
医薬品は対処療法ですから、目の前のニキビをやっつけることはできますが、ニキビができやすい肌の改善は出来ません。
ではニキビができやすい肌の改善はどうすればいいのでしょうか。
ニキビができやすい肌の改善をするには、自分の身体を大きくざっくりみます。
つまり生活全体の振り返ると言うことです。
夜更かしをして、昼間中途半端に寝て、また夜更かしをしてを繰り返していれば、生活リズムが乱れて肌が荒れてニキビが出来やすくなるでしょう。
睡眠は脳の整理の時間です。起きている間に動いて見て聞いて触れて臭った出来事を整理する時間ですから、睡眠がないと脳内は整理されていないゴミ屋敷と化します。
仕事で忙しくて、体力的に疲労していたら肌が荒れてしまうでしょうし、仕事でのストレスが発散されなければ肌が荒れてニキビが出来てしまうでしょう。
ストレスが溜まって「あ゛ーもう!」となるのは、脳内がゴミ屋敷で整理しきれずにいる状態ですから、それ以上頭が働かずにイライラするのでしょう。
寝不足で頭が回らないのも同じだと考えられています。
揚げ物やポテトチップスなど油の多い食事をしていれば、ニキビが出来やすくなるのも想像できると思います。
反対に、乾燥肌のニキビは食事で油が足りていないことが原因だったりします。
夜更かしという生活リズムや疲労にストレスに食事にと原因は1つではありませんが、どれもやり過ぎたことが原因であることが分かります。
肌が荒れると大抵は、「自分はこの中のどれに当てはまるか?」を考えると思います。
ですが“どれに”ではなく“どれとどれとどれ”と複数が連鎖していることもあります。
むしろ複数が原因であることのほうが多いでしょう。
複数あると、どれから改善すればいいか分からなくなりますが、そのときは思いつく中で一番改善しやすいことからやってみるといいです。
仕事絡みは相手がいますから、すぐに改善は難しいと思います。
言い方や立ち回り方の工夫で試行錯誤が必要でしょう。
夜更かしが原因の1つであると考えられるなら、今すぐにでも改善できるでしょう。
食事も自分が料理しているなら、乾燥肌なら肉や魚や揚げ物を増やしてみてもいいかもしれません。
原因をゼロにすることは出来ませんし、ゼロにしなくても改善すると思いますので、思い当たることをやってみるといいでしょう。
たとえ1つやってみて改善しても「自分にはこれがダメやったんか!」と決めつけてはいけません。
その時の肌トラブルの原因の1つだっただけで、それが主な原因だったので改善しただけで、次は違う場合もあります。1つの原因を改善しようとしたら、気づいていない原因も改善されて、気づいていない原因が主な原因である可能性もあります。
決めつけはせず、「次は気をつけよう。」と思い当たった原因を繰り返さないように注意するくらいにしておきましょう。
決めつけられるときは、症状が長期化して、原因を探っていたら消去法で絞られた場合だと思いますので、そうはなってほしくないなと思います。
自分の生活を振り返って、改善してみてもすぐには変化は出ないでしょう。
肌のターンオーバーが約4週間であるからではなく、肌が“すこやかに保つ”には、栄養をちゃんと食べて吸収されて、その栄養が身体全身に補給され、肌にも栄養が届き、肌の細胞たちがその栄養をきちんと活用できることにあります。
疲れてぐっすり寝て回復したと感じても、身体は元気になって、栄養を吸収して全身に巡らせられるようになったとは限りません。
慢性的に症状がある方は、身体が健康になるには症状がある期間分、長い期間が必要となるでしょう。
僕は肌や頭皮のケアである化粧品を研究するとき、生物学の視点でピンポイントに肌ではなく、身体全体から考えるようにしています。
夜更かしをして肌が荒れてしまうなら、夜更かしを改善しない限り治らないでしょう。
ポテトチップスを毎日食べるのは辞めないけれど、ニキビは治したい。というのは違うと思います。
肌を“健やかに保”ちたいのであれば、大前提として自分で改善できる生活部分は改善する必要があります。
それでも社会は人と人との繋がりですので、自分がいくら生活を整えようとしても巻き込まれるときもあります。それで疲れて肌が荒れてしまうこともあります。
化粧品とは、そういうときでも“すこやかに保”てるように、毎日使うアイテムだと考えています。そのためにどういったスキンケアやヘアケアを作ればいいか、どんな原料を使えばいいかと考えて日々研究しています。
肌が荒れるときは、肌が原因ではなく生活を含めた身体全体の不調が肌に影響されますので、スキンケアで予防していも肌が荒れるときは荒れてしまいます。
それは毎日ちゃんとご飯を食べているのに、体調を崩すときは崩してしまうのと同じようなものです。
毎日ちゃんとご飯を食べて健康を保とうとするように、“すこやかを保つ”為に必要なケアは何かを考えて化粧品を作っておりますので、良かったら一度お試しください。
化粧品研究者こまっきー
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