食事の話となると、必ずと言っていいほど、昔の食生活を比較されます。
昔は玄米だった。
昔はアトピーもアレルギーも少なかった。
だから、玄米のほうがいい。
昔はこんなに肉は食べてなかった。
だから、肉は食べないほうが良い。
だから「アトピーなどのアレルギー疾患が増えたのは食事のせいだ。」という考えがあります。
アレルギー疾患について昔と今を比較する時、食事だけで比較するのは単純過ぎると思います。
昔は肉をこんなに食べなかった。という話は、食べなかったではなく、食べれなかったです。
江戸時代は牛肉は食べるの禁止だったり、薬と考えられていました。
動物を殺して食べるのが禁止されていたという法令は、学校の歴史の授業で聞いたことがある、生類憐みの令です。
江戸時代の輸送手段に、飛脚という走って届ける人がいました。
佐川急便のロゴマークになっている、あれです。
江戸末期、「肉を食べないのになぜそんなに走れるのか。」と疑問に思った外国人が、飛脚に米の代わりに肉を食べさせたら、飛脚が走れなくなった。という話があります。
その話から、「日本人には肉は合わない。」と考える人がいます。
だから、肉は食べないほうがいいと。
しかし、これは簡単に理解出来る話です。
米の主成分は炭水化物で、肉の主成分はタンパク質と脂質です。
栄養がまるで違います。
炭水化物は身体を動かすエネルギーで、タンパク質や脂質は身体の部品です。
身体は炭水化物が足りなければ、タンパク質を炭水化物に変えて使用しますが、それは炭水化物が足りていないからです。
身体にはこういった素晴らしい機能があるため、炭水化物が足りなくても動くことは出来ますが、車にガソリンを入れずに改造して部品を増やしても、車はガソリンがなくては走れないでしょう。
身体のこういう機能は足りない場合の対処方法であり、ある意味危機的状況です。
身体のタンパク質をエネルギーに変えるのですから、筋肉は減り、身体は弱くなります。
もし、外国人が飛脚に肉を食べさせるとき、米と肉の両方を食べさせていたら、結果は違っていたでしょう。
それでも、海外旅行に行くと肉の量がまるで違うように、飛脚があの量の肉を食べていたなら、栄養の偏りだけでなく、胃もたれしていたことでしょう。
日本で冷蔵庫が普及し始めたのは1950年代以降ですので、随分最近です。
アトピーの原因と考えられている欧米食が普及し始めたのもその頃です。
今暮らしていて分かるように、冷蔵庫や冷凍庫がなくては肉は家庭で保管することは出来ないです。冷蔵庫などが普及してから肉が買いやすくなり、肉の消費が活発になったと考えています。
生類憐みの令で肉を禁止にしていなければ、江戸時代でも肉食は進んだでしょうし、電気が通っていないなりの保存方法は模索されていたでしょう。
冷蔵庫の普及で家庭で保存できる食材が増えて、食文化に変化が起こったように、電気が通ったことで暮らし全体に変化が起こりました。
部屋の冷蔵庫とも言えるエアコンが普及すると、1年を通して気温差があまりない環境で過ごすことが多くなりました。
気温差は体温調節の機能発達に関係し、免疫にも関与します。
気温差の少ない環境で過ごすことで、免疫の機能がうまく働かず、身近にあったものにアレルギーを起こすようになったと考えられています。
街の整備が始まり、道も土ではなくアスファルトに変わっていきました。
土なら草が生えて虫が集まりますので、日常生活で自然に触れる機会が沢山あります。
体温調節の機能が経験しないと発達しないように、免疫の機能も経験が必要です。
土や草、虫など色んなものに触れることで発達していた免疫の機能が昔ほど発達することが無くなったため、アレルギー疾患が増えたと考えられています。
変化のない気温の中で過ごし、清潔を意識しすぎて育つと、体温調節や免疫の機能は発達せず、食事の中身に関係なくアレルギー疾患が起こり得ます。
なので、「なぜアレルギー疾患が増えたのか?」と考える時は暮らしも織り交ぜて、生活全体的に見て考える必要があります。
例えば江戸時代と今では、運動量が少ないです。
昭和と今でも違うでしょうし、平成と今と比べても、今のほうが運動量は少ないでしょう。
しかしその反面、情報量がかなり多くなりました。
今の1日の情報量は江戸時代1年分に値すると言われています。
これも古い情報ですので、スマホが普及し、ながら見で色んな情報が次々入ってくる今の社会では、もっと多くの情報を脳は処理しています。
動かなくても、頭を使うだけでエネルギー(糖分)は消費されます。
これは僕が実際に体感しています。
高校の頃、ラグビー部を辞めて大学受験勉強に専念し、1日10-12時間勉強していたら、ラグビーをしていた時につけた筋肉が無くなっていき、体重も軽くなりました。
友達から「なんか背中小さくなったな。」と言われたほどです。
それだけ頭を使うことはエネルギーを使うということです。
また、頭を使うことは神経の消耗にも繋がります。人は今の情報量の多さを実感しているわけではなく、自然と入ってきてしまっているので、いつのまにか疲れてしまっている。なんてこともあります。
子供の頃、家にいるときはもっとぼーっと出来てたり、目の前に誰もいないなら人とコミュニケーションをとる必要もなかったことを思い出すと、ここ10年の間だけでも、休むことが減り、頭をずっと動かすことが増えたなと思います。
運動量は減りましたが、その分楽な生活をしているわけではありません。
情報量が多く、知らず知らずに脳や神経を使っているいるのが、今の暮らしです。
知らず知らずのうちに消費しているので、疲れたことに気づけずに、お腹が空いていることにも気づけていません。
なのでお腹が空いたら食べるという昔に行われていた食事方法は真似しないほうが良いと考えています。
運動すれば、消費している実感がありますし、お腹が空いたことにも気づけますが、
頭を使っていると、神経も消耗されるので、気付きにくくなります。
毎日同じ時間に同じことをしたほうが身体に負担がないので、1日3食、だいたい同じ時間に食べて、お腹が空いてないなら量を加減したらいいと思います。
アトピーという病名が生まれたのは1923年です。
その後日本にもその考え方が取り入れられ、各病院で「なるほど。こういう場合がアトピーの症状なのか。」と認識が普及するにはかなり時間がかかったでしょう。
1923年以前はアトピーと言う病名はなかったので、1923年以前と今とでアトピーの増減の比較は出来ません。
また、普及と共にアトピーと診断される人も増えていくので、こういう変化は今と変わらないくらい認識が普及した頃と比較するべきでしょう。
それでもその頃と今とでは判断基準が異なれば、アトピー患者の増減の判断は難しいと思います。
エアコンが普及し、気温差のない生活環境になって、アレルギーが増えたと考えられていますが、その分季節特有の大きな病にかかる人は減りました。
街が綺麗になったことで、伝染病も減りました。
体温調節や免疫の機能が下がってアレルギーになりやすくなったと、悪いことばかり取り上げましたが、むかし苦しんでいた病からは解放されたと思います。
東洋医学では、昔は栄養が足りずに乾燥肌の人が多かったが、最近は昔のような乾燥肌になる人は減ったと言われています。
肉の摂取量が少なくタンパク質が足りないと、身体の部品が足りませんので、乾燥肌になりやすかったのでしょう。
アレルギーやアトピーなど、現代特有の病気を考えるのに、昔の食事と比較する傾向があります。
しかし昔は昔で、流行病があり、それは今は解決されています。
その解決には、生活環境や食事改善が役に立ったことでしょう。
ですが、アレルギー疾患という新たな病気が増えているということは、行き過ぎているのかもしれません。行き過ぎているなら調節が必要でしょう。
昔と比較して、改善策を考えることは大切ですが、1つの変化だけをみていると、その1つを調節すればいいという話になり、1つだけではその1つはまた行きすぎてしまう可能性があります。
自分たちの生活は食事だけではないので、こういうときは生活全体の変化から読み解いて、いいところと悪いところを把握し、そのバランスを取っていくことが大切でしょう。
化粧品研究者こまっきー
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