陰虚とは東洋医学で使われている体質診断の結果の1つです。
一般的には陰虚体質の人は、全身の潤いが不足していると言われています。
潤いが足りていないので、肌の乾燥、喉の渇き、目は疲れやすくコンタクトを使用したら目に傷がいきやすかったり、寝る時に手のひらや足の裏が火照ったりと、身体が熱っぽくなる状態になっています。
陰虚の反対は陽虚です。
身体を温める力が弱く、冷え性で寒がりで、冬になると服を何枚も着ていたり、寒いと活発に動けない人が多いです。
ヨボヨボのおじいちゃんといえばイメージしやすいでしょうか。
蒸気機関車が石炭を燃やして動かしているのと同じように、僕たちの身体も栄養をエネルギーに変える時に熱が生まれます。
人は体温を一定に保つ動物ですから、熱が盛んになると、体温が上がらないように汗などで放出します。夏のように外の気温が高いと、その気温に影響されて身体も暑くなるので、汗などで熱を放出します。
冷え性の方は寒いと服を何枚も着るように、熱が外に出て行きやすい状態です。
服は動物でいう筋肉や脂肪、皮膚や毛の代わりですから、冷え性の人は筋肉や脂肪が少ないのでしょう。
なので元気がないおじいちゃんを想像すると、筋肉も脂肪もないヨボヨボのおじいちゃんを想像すると思います。
赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時は、外の気温調節はお母さんがしてくれています。
お腹の中の赤ちゃんの外の世界はお母さんのお腹の中ですから、お母さんが体温を一定に保っている限り、赤ちゃんは同じ気温の中で成長すればいいのです。
つまり、夏の暑さや冬の寒さに合わせて体温調節をする必要がありません。
しかし生まれると状況が変わります。
赤ちゃんの外の世界は、お母さんのお腹の中から地上に変わります。
僕たちが暮らす地上では、四季があり、細かく言えば1ヶ月ごとに気温は変わっていきます。
さらに細かく言えば、1日で最低気温と最高気温があるように、1日の間でも気温は変わります。
すると赤ちゃんは気温の変化に合わせて、体温を一定に保つ力をつけないといけません。
人は生まれる前から力が備わっているのではなく、生まれてから経験をして力をつけていく動物です。
ですので、経験が足りていない子供は気温の変化に弱く、季節の変わり目に体調を崩しやすくなります。
大人のようにある程度完成された状態でも、季節の変化で体調を崩してしまうのですから、子供が体調を崩しやすいのは当然でしょう。
そこで体調を崩さないように季節の変化を避けるのか、ある程度経験させて体を強くしていくのかは、今後の生活に大きく影響するでしょう。
さらに子供の頃は成長期ですから、身体自身がどんどん変わっていきます。
まるで毎日ビルを補修する工事ではなく、大きくする工事をしている感じです。
ビルの中では色んな会社の社員たちが働いている中で、ビルという身体を大きくしていきます。
なので、子供はエネルギーをたくさん消費します。
タンパク質などの身体の部品もたくさん消費します。
エネルギーをたくさん消費するのですから、身体にはたくさんの熱が生まれます。
子供が季節の変わり目に体調を崩しやすいのは、気候の変化だけではなく、元々身体が熱を生み出しやすいからだと考えています。
子供が寝ている時、身体は熱いです。
子供は常に身体にたくさんの熱を生み出しているので、子供を東洋医学の体質診断すると、陰虚に当てはまりやすくなります。
陰虚の反対の陽虚がヨボヨボのおじいちゃんというのは、これで納得されると思います。
ところが、東洋医学の勉強をしていると、「近年は陰虚体質は減ってきた。」と書いてあります。これは2000年代の記事でしたから、もうすでに20年くらい経っているのですが、理由は昔と比べて栄養失調になることが減ったからだと書いてありました。
昔は栄養豊富な食生活を送ることが難しく、栄養が足りなければ身体は調節も筋肉などでバリア機能を強化することもできませんから、熱の処理がうまくできずに、大人でもカサカサした肌の人が多かったようです。
昔に比べて色んな食材を食べることができるようになったことで、陰虚になりにくくなりました。
そんな現在で、僕は陰虚体質は増えているんじゃないかと考えています。
陰虚は潤い不足だから、熱を抑えるという考えがありますが、その熱は過剰なのではなく、うまく調節できていないだけかもしれません。その場合、熱を抑えてしまうと体質は陽虚に傾き、冷え性で、活発に動けなくなるでしょう。
陰虚の反対はヨボヨボのおじいちゃんですから、病気にもなりやすくなります。
炎症ほどの余分な熱ではない場合は、うまく処理できるようにならないといけません。
身体に脂肪や筋肉をつけると、むやみに熱が出ていかなくなるので、体温調節はしやすくなります。高齢者の方は少しぽっちゃりしている方が元気なのは脂肪によって体温調節ができているからではないかと考えています。
身体の余分な熱を放出するだけではなく、外の気温差に左右されにくくなることも体温調節には大切です。ガリガリだと冬は熱が奪われていくみたいに寒いです。
食べ物はしっかり取れているので、身体のほうの部品やエネルギーは足りているのですが、最近は経験が足りていないと思います。
僕が小学生の頃は冬に長ズボンを履くのは禁止されていました。
「子供はすぐ暑くなって汗をかくから。」という考えみたいですが、それ以上に寒い冬の気温が直接肌に当たることは身体にとっての良い経験になります。
夏は汗だくになりながら音楽の授業を受けている写真がありました。
Xで小学校の教室にエアコンが配備されていることを自慢している市会議員の方がいました。
勉強をする上では、暑い日と寒い日は頭が働きませんから、教室の温度は過ごしやすい方がいいでしょう。
しかし身体のことを考えると、体育の時以外、1日中同じ気温の中で過ごしていると、身体は熱の調節をする機会がありません。
まるで赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時みたいです。
これではせっかく地上に出てきたのに、地上で生きる術を学ぶタイミングがありません。
身体は気候の変化に合わせて体温を調節するだけではなく、身体の中が成長する過程で生まれる熱によっても体温調節する必要がありますし、なにかに触れて炎症が起こった場合でも身体の熱を調節する必要があります。
風邪の発熱も、アトピーの炎症も、鼻炎である花粉症などのアレルギーも、腰痛も肺炎も、どれも熱によるトラブルです。
精神疾患も、顔が赤くなったりするように熱も関与しています。
僕たちが健康に過ごすためには、身体の熱の調節はかなり重要です。
その調節は経験がなくては上手くなりません。
いくら栄養満点でも、経験なくしては健康にはなれないでしょう。
昔は栄養失調によって、病気になりやすくなっていたのが、今は経験不足で病気になりやすくなっています。
花粉症がまさにそうです。
どの家にもエアコンが必ずあって、学校にはどの教室にもエアコンがあるなら、むしろ昔よりも安心して子供は外で遊べるはずです。
何かあっても、外と同じように暑い家に避難するのではなく、ちゃんと涼しい場所に避難することができるわけです。
だったら、昔よりもたくさん色んな経験ができるはずです。
栄養失調にならず、色んな経験ができれば、子供は昔よりも元気な子に育つでしょう。
実際はそうではなく、昔とは違う花粉症などの病気になっているあたり、昔と変わっていないか、ひょっとすると経験不足の方が陰虚体質は増えているのではないでしょうか。
子供に教えるのは勉強だけでいいのか、病気にならないようにするだけでいいのか。
身体を強くすることは考えなくていいのか、もう一度考え直さないといけないでしょう。
少なくとも成長期を終えた大人と同じように考えてはいけないと思います。
化粧品研究者こまっきー
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