化粧品研究者こまっきーの語り部屋

化粧品研究者こまっきーが普段考えていることを書き留める、日記のようなもの。

化粧品の評価の難しさ。

レビューや口コミから判断するのは非常に難しいです。
例えば気になる飲食店を調べて、Googleマップや食べログ、または最近ではSNSの投稿を見て判断して、いざ食べにいっても、書いてあった評価と全然違うことはよくあります。
おそらくそれは、口コミを書いている人と自分の視点が違うからです。

口コミを書いた人は1000円のランチとしては美味しいと感じて良い評価を書き、自分は単純に美味しいか美味しくないかで判断しているならば、その1000円のランチを食べにいくと失敗だと感じるでしょう。
または飲食は味の好みで良し悪しが大きく左右しますので、味の好みが同じかどうかわからない人の口コミを読んでも、判断できないです。

なので僕は、口コミの写真で判断します。
ハンバーガーは慣れてくると分かりやすいです。
しっかりしたバンズかどうかはバンズの表面の色で判断できますし、パテの厚みや野菜の具の量も判断できます。
最近ではショップのアカウントで作っているところを見れるので、そこからも判断できます。
焼く前のパテが粗挽きだと、筋が残っていたり肉が硬かったりします。

ネットの口コミの存在はどんどん広がっていって、とうとうAmazonのようなECモールでも当たり前のように存在していますが、口コミから判断するのは難しいです。

このように一般人として口コミを判断することは難しいわけですが、実は研究者になっても口コミの判断は難しいのです。

化粧品の研究をしていると、原料メーカーの営業マンが新しい原料の紹介をしにきてくれます。資料には、だいたい最後に化粧品にして、社内の女性に使ってもらった時の評価が書いてあります。営業しにくるくらいですから、良い評価しか書いてありません。
そのオススメの原料が入っているものと入っていないものの2種類の使い分けで、評価をレーダーチャートのグラフで表しています。スキンケアだと“しっとり”とか“乾燥”とか書いてあるわけですが、当然オススメの原料が入っていないものより入っている方が評価が高いのです。
なので資料の中で一番アテにならないのが評価の部分だと思うのですが、なぜか必ずあります。

僕は資料や営業マンが話す内容と質問から、評価以外の部分からオススメの原料を使ってみるかを判断するようにしています。
そしてその原料が良いか悪いかはこっちで判断するわけです。

こっちで判断するときに、ただ女性に使ってみてもらって良し悪しの判断をしてもらうだけでは、飲食店の口コミと同じ結果になります。
使う人の視点がわからないと、本当に良いのか悪いのか、判断できません。

例えばマスカラの研究をしていたときです。
実際に女性に使ってみてもらおうと、社内で声をかけたら20人ほど集まりました。
その人たちにはマスカラのサンプルと評価の紙を渡しました。

その紙には“化粧持ち”などの各項目を5段階評価することと、記述用の空白、そして普段使っているマスカラやお気に入りのマスカラを書いてもらうようにしました。

マスカラは大きく分けて、お湯オフできるマスカラとできないマスカラがあります。
お湯オフできるマスカラは乳液やクリームのように水とオイルを混ぜてできたものです。ベースが水なのでお湯でオフできるのですが、お湯オフできないマスカラは100%オイルでできています。なのでオイルクレンジングなど使う必要があります。

お湯オフできるマスカラは簡単に落とせる反面、汗などで化粧崩れしやすいです。
お湯オフできないマスカラ、油性マスカラはクレンジングを使わないといけないくらい、化粧崩れしにくいです。
どちらも皮膜剤が入っているので、ウォータープルーフと言えます。
油性マスカラかどうかは、使用方法を読んでお湯オフできるかどうかで判断したり、全成分をみて水が入っているかどうかで判断できると思います。
化粧崩れを重視していて、「どうせメイク落とす時にクレンジング使うやん。」と思う方は油性マスカラでもいいかもしれません。

またマスカラは仕上がりでも大きく2つに分かれます。
ロングとボリュームです。
ロングの場合は、まつ毛に付着するマスカラの量は少なめにして、まつ毛が長く見えるような仕上がりになります。
ボリュームの場合は、まつ毛に付着するマスカラの量を増やして、1本1本厚みがでるような仕上がりになります。
ファイバーを使って、ロングやボリュームの仕上がりを作ることもあります。

お湯オフなのか、油性なのか、ロングなのかボリュームなのか。
またはどれくらいのロングなのか、どれくらいのボリュームなのか。
新しく作ったマスカラを試してもらい、評価を書いてもらって、その評価を正しく判断するには普段使っているマスカラを記載してもらわないと、どの視点で評価しているのかわかりません。

普段はロングのマスカラを気に入って使っている人に、ボリュームのマスカラのサンプルを渡すと「なんかボテボテする。」と悪い評価が返ってくるのは当たり前です。
普段は油性マスカラを気に入って使っている人に、お湯オフできるマスカラを渡して「化粧持ちが悪い。」という評価がでるのも当たり前です。
ですが、普段のマスカラ事情がわからないと、悪い評価をそのまま受け取ってしまいます。

普段お湯オフできるボリュームのマスカラを使っていて、お湯オフできるボリュームのマスカラのサンプル評価が悪ければ、これは気になる評価です。
早速紙に書いてあるお気に入りのマスカラを検索し、買いにいって、違いを確かめます。

どの視点での評価なのか。これが分からないと評価を正しく判断できません。

これがスキンケアだと一気に難しくなります。
肌は日々入れ変わっていきますし、その人の体調に肌は大きく影響します。
季節も影響します。
同じ人に夏に評価してもらい、乾燥を感じなくとも、冬になると乾燥を感じると言われたりします。
同じ人でも、仕事が忙しかった時とそうでない時では、そうでない時の方が評価は高くなる傾向があります。
忙しければ疲れて、肌が荒れやすくなるので、当然と言えば当然です。
なのでスキンケアは普段使っている、お気に入りのスキンケアを書いてもらっても、それ以外に肌の状態が変化する条件が多すぎて、判断はかなり難しいです。

口コミは商品が気になる時に、メーカーの言葉以外で判断するための材料となっています。
実際に一般の人が書いてあるという親近感が、安心感を与えるのでしょう。
しかし実際は、購入後に「Amazonで星5と口コミ書いてくれたらアマギフ1000円分プレゼントします!」というメールがくるように、メーカーの意図が含まれた口コミがあることを多くの人が気づいてきています。
ポイ活が流行り出してからも、同じような気づきがあるでしょう。

口コミが必要とされない日は来るのかは分かりませんが、化粧品を販売している僕としては、口コミではなく、メーカーの言葉で気になって「買ってみよう。」と思ってもらわないといけないなと、日々自分が考えていること発信して、こういう風なことを考えている人が作っている化粧品をいうことで興味を持ってもらえたらなと思っています。

化粧品研究者こまっきー

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