化粧品研究者こまっきーの語り部屋

化粧品研究者こまっきーが普段考えていることを書き留める、日記のようなもの。

自分が使いたい化粧品を作る。

商品を開発する時、コンセプトを掲げたりします。
その時、大抵は誰かのためです。
こういう年齢層の、普段こういう人のための、という風に、コンセプトや発信からは誰かのために商品が作られているイメージがあります。
僕はこれを、独立して自社ブランドを出すずっと前から変に思っていました。

どんな商品であれ、研究者または職人の人がいると思います。
研究者や職人はプロです。
評価する人も使う人側ですが、研究者や職人は使う人よりも詳しく、使う人よりも沢山の試行錯誤を繰り返しています。
それなのに、いざ商品を作る時は研究者や職人が良いと思うものではなく、お客さん目線の意見が重視されがちです。
僕は2014年から化粧品の研究職に就いて、研究兼営業兼企画という立場で色んなメーカーの商品に携わってきましたが、年々お客様目線が重視されるようになっていったと感じています。
試作品を作ってメーカーの人に提出し、その人が気にっても、商品化されないことが多々ありました。理由は会議で「それは売れるのか?」ということがテーマになっているからだそうです。

今の流行から、需要があるのかどうかを考えて、売れるかどうかを判断する。
ニーズに合わせながら、差別化できる商品を考える。
これを当たり前と思う人がいるかもしれませんが、僕はここが不思議なんです。
セレクトショップなどの小売業の人が今のニーズや需要を考えて商品を仕入れるのなら分かります。商品を販売する立場ですので、売れる商品を仕入れようと考えるでしょう。

しかし、商品を作るメーカーが需要を重視するというのはどうなんでしょうか。
重視している流行は自然に発生したものではありません。
メーカーや小売のセレクトショップなどが宣伝をして、人気になっています。
つまりどこかの企業が仕掛けたから、今の流行があるわけなので、同じメーカーとしては仕掛ける立場にいなければいけないのではないかと思います。

流行を作るとまでは言わないまでも、自分たちの商品を気に入ってもらえるような発信をする。需要に合わせるのではなく、メーカーの中で良いと思える商品を作り、それがいかに良いかを発信していく。
それがメーカーという立場だと思っていた僕は、下請け化粧品会社に勤めた時に、そうではなく流行に合わせた商品作りが多いことに驚きました。
聞き覚えのある言葉は馴染みやすいので自分たちが発信する以上に、流行に乗ると効果があります。しかし波が小さくなれば、その分小さくなります。
流行が早く変われば、波が小さくなるのも早くなります。

中には流行を気にしなかったり、研究者である僕の意見を聞いて商品化をしてくれたメーカーもいました。
そういったメーカーは元々自分たちで売り先を持っているメーカーが多かったですが、流行関係なく商品作りをしていたので、流行に乗った商品よりも数は少なくとも定期的にリピート注文がきていました。

僕はヘアワックスに凝り始めた時に、「自分がセットしやすいヘアワックスを作ってみたい。」と思ったことから、化粧品の研究者を目指すようになりました。
それは高校生の頃ですので、業界の色んな売り方を見ていると考え方も変わることもありそうですが、「自分が使いたい」という部分は変わらずにいます。
研究職であるからでは?と思うかもしれませんが、研究でも職人でも需要に合わせて作る人はたくさんいます。
特に誰でも発信できるようになった今の社会では、周りを見て需要に合わせることに意識が行き過ぎているように思います。
その結果、ますます職人の人が需要重視になってしまっているのではないかと思います。

僕は小さい頃から音楽が好きですが、音楽のプロデュースする人は需要やその人に合わせて曲を作りますが、自分が作ったことがわかるような曲調になっています。
その印象もあるからか、下請けで商品を作る時には、相手の依頼に合わせながらも、自分が作ったことがわかるような商品作りをしています。

自社ブランドの第一弾であるこまっきーファンデーションはまさに自分が研究をしていて疑問に思ったことの研究を重ねて、商品化しました。
メイクは重ねれば重ねるほど、化粧は崩れやすくなるので、1本化 してみてはどうだろうか。
その際に、「BBクリームのようにただカバー力を上げるのではなく、下地の効果も配合して、ベースメイクに必要な効果を全て入れると、どんな仕上がりになるのだろうか?」
そう考えて研究を始め、自分が使いたいと思えるものができたので、商品化しました。
もちろん、自分で使って、良いと思えば女性にも使ってもらい、女性からの評価も参考に改良を進めて商品化しています。
需要や評価は取り入れるべきですが、軸にしてはいけないと思います。

スキンケアも冬になると何を塗っても乾燥することから、「オイル100%にしてみてはどうか?」と沢山のオイルを顔に塗って試しました。
最初は単体のオイルを塗って、何日か過ごしてみます。オリーブオイルだったらオリーブオイルのみを化粧水の後に塗る。ホホバオイルだったらホホバオイルのみを化粧水の後に塗る。ワセリンにエステルオイル、アルガンオイルなど、様々なオイルを試しました。
その上で、オイルを選定し、混ぜて割合を決めていきました。
スキンケアですので、肌の皮脂のバランスも考えて作りました。
化粧水も「表面に残ったら、せっかくの水分が飛んでいってしまわないか?」と考えて、シャバシャバで、早く浸透する化粧水を作ろうと考えました。
オイルと同じく、それ以外の成分を1つ1つ試して、良いと思ったものを選定し、どれくらい配合するかを研究しました。

ヘアケアは、使い始めは良いのですが、使い続けるとパサついたり、ベトっと重たくなることが嫌で、「使い続けても髪質が変わらないようにヘアケアでできることは何だろうか?」と考えて研究が始まりました。髪の毛はどう足掻いても、時間が経つとともに毛先は痛んでいきます。それを「ヘアケアでどれだけケア出来るものなのだろうか?」という疑問からスタートし、色んな補修成分を試していきました。
シャンプー、トリートメント、洗い流さないトリートメントと3つの働きは全く違います。そしてシャンプーの後ではなく、この3STEPが終わった後の質感が一番大切です。
3STEPでケアを完成させることと、それぞれの役割を最大限に活かせることを考えながら研究を進めました。
スキンケアもヘアケアも、ある程度形になったときには女性に使ってもらい、その評価も取り入れながら研究を重ねて商品化しました。
全て“自分が使いたい”と思えることが大前提にあるので、できた商品は毎日使っています。
使いながら、「もっとこうしてみてはどうか?」と気になることがあれば、また研究が始まります。

SNSで注目を浴びるには、SNSの流行に乗らないとおすすめ投稿にも表示されません。
アカウントを開設しても、注目を浴びないと意味がないと考えて、流行に合わせた言葉選びや投稿をするアカウントは多いと思います。
それでは、せっかく個人が発信できるようになったのに、何だか勿体無いです。
今まで通り、需要に合わせた発信、需要に合わせた商品作りから抜け出せていません。
消費者側からしても、同じような投稿ばかりみるよりも、お皿だったら職人ごとに雰囲気が全然違うお皿の投稿を見ていた方が楽しいはずです。
そしてなにより、職人は軸が流行ではなく、自分の好きや考えが軸ですので、需要に合わせて発信するのは難しいです。
流行と需要に合わせた発信は職人にとっては苦痛だと思います。

2010年には殆どだれも見ていなかったyoutubeを沢山の人がみるようになり、InstagramやXなど、動画だけではなく、言葉や写真に重点を置いたSNSも人気になりました。
人は十分集まったと思うので、次は流行や需要関係なく、発信する人が増えればいいなと思います。

化粧品研究者こまっきー

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