化粧品研究者こまっきーの語り部屋

化粧品研究者こまっきーが普段考えていることを書き留める、日記のようなもの。

研究ベースの営業マン。

僕は化粧品の研究者です。
高校生の頃に「化粧品の研究をしながら、自分で商品を販売したい。」と考えて、化粧品会社の研究職に勤めました。
高校生の頃はヘアスタイルに興味があったので、ヘアワックスを作りたいと考えていましたが、働いていた会社は主にメイクを作る下請け会社でした。
新卒の時は「化粧品会社に入れたらいい。」と考えて、営業職で就職しましたが、自分の目的と違うことに気づいて転職をしました。転職したときもヘアケアかその後興味を持ったスキンケアを作っている会社を探しましたが、そもそも研究職の枠はわずかでした。
たまたまメイクを作る化粧品会社での採用がすんなり決まったこともあって、「研究ができることを最優先に考えよう。」とメイクの世界に入ることになりました。

これは僕にとって良い選択となりました。
会社の環境も良く、前職で営業を経験していたこともあって、半年経った頃には研究と営業も行うようになっていました。自分のお客さんを持つようになり、依頼を受けて自分で試作したサンプルを自分でお客さんのところへ持って行き、直接フィードバックを得ることが出来ました。
普通なら研究職の人は研究だけで、社内の営業から依頼を受けて試作しますが、勤めていた会社は営業がいなかったので、直接研究が営業をしていました。
当時は部長と次長しか営業をしている人がおらず、あまり研究の人は営業をしたがらなかったので、営業経験のある僕がすぐに営業もするようになりました。

お客さんの話を直接聞くのと、お客さんの話を営業づたいで聞くのとでは、全然違います。
営業は中身のことはわからないので、例えばファンデーションの依頼でお客さんが「なんか滑りが悪い。」と言えば、その言葉をそのまま僕に伝えます。実際にこちらは研究が営業をしていても、企画会社の先にお客さんがある場合は、お客さんと僕の間に企画会社という営業が入ります。
その場合は、お客さんの言葉を企画会社の人はそのまま僕に伝えようとするので、「なんか滑りが悪いので、滑りを良くしてください。」と修正依頼をしてきます。
しかし、僕は中身のことをわかっているので、滑りが悪いというのはどういう時に感じるのかを詳しく聞こうとします。
滑りが悪いと言われれば、サラサラした粉を入れて滑りを良くしようと考えますが、そういう意味ではない可能性もあります。

営業づたいでも色々聞いてみると、ファンデーションを顔に塗布した時の伸びが悪いということでした。
それはサラサラした粉を入れてサラサラさせれば良いわけではなく、ファンデーション全体のバランスを見て、調節しないといけません。
サラサラした粉を入れると伸びは改善されますが、カバー力が結構あるファンデーションだと、カバー力を出す粉はベトベトしているので、これが多いとどう改良してもあまり改善されないこともあります。シリコーンが使えるといいのですが、天然系だと使える原料が限られているので、改良も難しくなります。
顔に塗布したときの粉の広がりが悪くて滑りが悪いと表現している場合もあります。
お客さんがいう滑りが悪いをそのまま言葉通り受け取るのではなく、細かく聞かないと改良しないといけない点は見えてきません。

改良した試作品を提出するとき、僕は改良した点とこれ以上修正した場合にはどういうデメリットが出てくるのかを詳しくメールに書いて、企画会社の営業の人にはお客さんにそのまま伝えてもらうようにお願いします。
何事もメリットとデメリットがあります。
カバー力があるけど、滑りが良くて、ベトベトしなくて、白浮きしないファンデーションなんてありません。カバー力をあげればその分のデメリットは出てきます。そうならないように、色んな原料を配合しているのですが、限界はあります。
商品を作りたい人は「もっと良いものを。」と思うわけですが、最終的にはメリットデメリットのバランスを考えないといけません。
納得できるバランスを取ってもらうためにも、「今回はこういう原料を増やして、こうなるように改良したけれど、これ以上増やすとこんな風になる。」という説明をします。
こういう話を間に誰か入ると、伝言ゲームのように内容が変わってしまいますし、メールでコピペして一字一句変えずに送っても、今度はお客さんから返信が来ると、もう営業はお手上げです。
「直接会って話をしてくれ。」と言われたこともあります。

新卒で入った会社は化粧品メーカーでした。
入社すると、営業も研究もまずは同じ研修を受けて、研究でも1年は営業を経験していました。
研究をしながら営業をしている僕からすると、逆じゃないかと思います。
なぜ中身の知識をつける前に、お客さんとのコミュニケーションの方を優先するのでしょうか。
「研究もお客さんの気持ちを知っておくように。」という意味なのかもしれませんが、僕からすればその気持ちに答えるのには、まずは中身の知識を知らないといけないのではないかと思います。
営業は商品を売るので、商品を売るための知識を身につけます。
それは研究で身につける知識とは全然違います。
僕も営業をしていた頃、お客さんから「この商品はどうなのよ?」最近流行っている化粧品や成分のことを聞かれたことはあります。その時、ネットに書いてあることくらいしか説明できませんので、曖昧に誤魔化すことくらいしかできませんでした。研究をしていないので、化粧品会社に働いているのに、営業で商品を売っているのに知識は一般人と変わらないのです。

せっかく研修をするなら、営業ではなく研究の方ではないかと思います。
そのメーカーがどういうことを考えながら成分を選んでいるのか、研究をしているのか、ということを実際に手を動かして研究を経験してみてから営業しに行った方が、話せる内容も多く、お客さんの疑問にもうまく答えれるのではないかと思います。
調子良く話ができる営業マンより、疑問を解決してくれる営業マンの方が納得して商品を仕入れることができるのではないでしょうか。

あまりにもどっぷり研究に浸かってしまうと、良い部分と悪い部分の両方を知ってしまい、ハッキリ言えなくなるかもしれませんが、僕は普通の営業と研究ベースの営業を経験して、営業マンは研究ベースにした方が良いのではないかと思っています。

化粧品研究者こまっきー

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