化粧品業界では、原料を仕入れる時は原料メーカーから直接仕入れるのではなく原料ディーラーが間に入ります。
ネットが普及し、調べればなんでも出てくる時代になると、「ディーラーというポジションはなくなるのではないか?」と思うことがあります。
化粧品業界ではCosmetic-infoという原料のデータベースサイトがあります。
各原料ディーラーのHPにも取扱原料のデータベースがあるのですが、各原料ディーラーの情報がまとまっているようなサイトがCosmetic-infoです。
僕も原料を探す時にはCosmetic-infoで検索する時があります。
僕がCosmetic-infoで原料を探す時は、化粧品表示名称がわかっている時です。
他社製品を購入し、使ってみると結構良かったときに、全成分を見ます。
全成分を見て、知らない原料があると「これは何や?」とCosmetic-infoで検索をします。
全成分に書いてある化粧品表示名称をCosmetic-infoで検索をすると、それについての説明と、その化粧品表示名称に当てはまる原料が出てきます。
その説明や原料のページに書いてある説明を見て、なんとなくどういう原料か分かって、自社でも持っている原料に近ければ、一度自社の原料を使って試作してみます。
どういう原料か分からない原料であれば、サンプルを取ってみます。
原料メーカーは1社の原料ディーラーと契約しているわけではないので、Cosmetic-infoには、その化粧品表示名称に当てはまる原料名や原料メーカーの記載はありますが、取扱ってる原料ディーラーまでは書いてありません。
それでも研究していると大体はどの原料をどのディーラーが取り扱っているかはわかってくるので、原料ディーラーに連絡して欲しい原料のサンプルを依頼します。
昔は何かわからないことがあれば、取引のある原料ディーラー数社に連絡して、探している原料の取り扱いがあるかを聞いていました。検索サイトがなければ、化粧品表示名称が分かっても、原料名や原料メーカーまでは分かりません。なので、原料ディーラーには「この化粧品表示名称の原料の取扱ありますか?」という連絡になります。
今はネット上にある検索サイトCosmetic-infoで検索すれば、原料名から原料メーカーまでわかるので、原料ディーラーには「○○社のこの原料のサンプルお願いします。」という連絡になります。
これだけ聞くと、原料ディーラーは何もしなくても仕事が回ってくる楽な仕事のように感じます。
しかし、これができるのは自分が化粧品表示名称や原料名を知っているときだけです。
化粧品表示名称もわからず、原料名もわからない場合は、かなり曖昧な情報になってしまいます。例えば低粘度のオイルだけど、ちょっととろみを感じるようなオイルを探そうと思った時、これは検索では見つけることはできません。
なぜなら、そう書いてある原料はたくさんあるからです。
低粘度というのはある程度基準がありますが、“ちょっととろみのある”という表現は僕の勝手な感覚です。普段僕が使っている低粘度のオイルよりも“ちょっととろみのある”を探しているのですが、どこで検索しても自分の感覚をベースに表現を変えてくれるデータベースなんてありません。
調べると、普段僕が使っている原料にも“ちょっととろみのある”という表現が書いてあれば、そのデータベースに書いてある“ちょっととろみのある”という表現と自分の“ちょっととろみのある”という表現は違うことになります。
すると、データベースに書いてあるどういう言葉から欲しいオイルを見つけ出せばいいのか分からなくなります。
こんなとき、原料ディーラーに聞けば「こういう原料はどうでしょう?」と、いくつか候補を挙げてきてくれます。
原料ディーラーに聞く時は、普段使っているオイルの原料名を書き、これよりも“ちょっととろみのある”オイルを探していると伝えることが出来ます。“ちょっととろみのある”という僕の勝手な表現であっても、データベースからの検索よりも的確なオイルを紹介してもらえます。
実際には原料ディーラーは原料メーカーに聞いたり、タイミングが合えば原料ディーラーと原料メーカーが原料一式を持って商談しにきてくれたりすることもあります。
となると、「やっぱりディーラーって必要ないのでは?」と思うかもしれませんが、データベースの検索では、その原料メーカーにすら行き着けないことも多々あるのですから、原料ディーラーのおかげで、その原料メーカーや原料を知ることは多いです。
先日も、とある原料を探していたのですが、どう調べたらいいのか分からず、ちょっと調べてみても自分の欲しい原料では無かったので、原料ディーラーの営業マンに聞いてみました。
すると、2時間後には「こんな原料はどうでしょう?」とメールで資料を送ってきてくれました。
まさに僕が探していた原料に近かったので、いくつか質問をして、その後サンプルを取りました。
その営業マンはいつも返事が早く、検索では到底見つからないような曖昧な言葉の表現でも的確な原料をチョイスしてきてくれます。
反対に、まあまあの営業マンは僕がCosmetic-infoで見つけて「これじゃないねんなー。」と思っている原料を紹介してきます。
おそらくまあまあの営業マンは、自社の原料データベースやCosmetic-infoを検索して、原料を探しているのでしょう。
原料ディーラーの営業マンというポジションは、自分の頭の中に取扱い原料メーカーや原料をデータベース化しておかないと、曖昧な言葉の表現に対応できないでしょう。
またデータベース化だけではなく、どういう原料か理解しておかないと、今回のように紹介できないと思います。
AIは膨大なデータを瞬時の収集して、返事していますが、ネットで検索するのと同じくらいの情報しか出てこないことが多いです。また、今のところは結構的外れな返事をしてくることもあります。昨日、「金縛りはなぜ起こるのか?」とAIに聞くと、「金銭感覚の歪み、節約へのこだわり、将来不安、貧しい環境が主な理由です。」という返事が返ってきました。
おそらく金縛りを読み間違えたのでしょう。
日本語は文章の区切り方にルールがありませんし、同じ漢字でも読み方が変われば意味が変わるので、AIに日本語を理解するのは無理なのではないかと思います。
かといって、AI普及の流れで、こちら側がAIに合わせて日本語を使わないといけなくなるなら、それは表現方法を狭めることになるので、反対したほうがいいでしょう。
ネットが普及し、AIが出てきて、情報が調べれば簡単に出てくる時代になろうとしています。
するとディーラーという職業はAIに奪われるのではないかと、その方が間に1社入らないので、仕入れ価格も抑えられるのではないかなんて思ったりしていました。
しかし、僕はいざ困れば原料ディーラーの優秀な営業マンに連絡をしています。
ネットで検索をしたりAIに聞くというのは、自分が考えている範囲に答えがある時は使えます。しかし自分の知らない、想像もつかないところに答えがある場合は、検索してもAIに聞いても答えは出てこないです。
そんな時は人に聞くしかありません。
または、自分が答えはここにあると思っていたら、全然違う場所に答えがあるなんてことはよくあります。そんな時に、全然違う場所に答えがあることを教えてくれるのも人です。
そう考えると、いくらAIが普及してもディーラーというポジションは無くならないでしょうし、特に優秀な営業マンはますます重宝されるでしょう。
化粧品研究者こまっきー
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