化粧品研究者こまっきーの語り部屋

化粧品研究者こまっきーが普段考えていることを書き留める、日記のようなもの。

頼りに出来ない大人たち。

11月に広島大学と同志社大学で講演予定だったエマニュエル・トッドさんが来日できなくなったので、佐藤優さんがエマニュエル・トッドさんの新刊“西洋の敗北-日本と世界に何が起きるのか”に触れた基調講演が行われていました。
YouTubeでおすすめ動画にあがっていて知ったので、“同志社大学 佐藤優”、“広島大学 佐藤優”と検索していただければ、すぐ出てくると思います。
どちらも同じ題材ですが、中身はちょっと違います。

2つの講演を聞くと、エマニュエル・トッドさんの新刊“西洋の敗北-日本と世界に何が起きるのか”を読んでみたくなります。
今回はその新刊に関する部分ではなく、同志社大学の基調講演で佐藤優さんと学長との対談の中で話されていたことが「やっぱりか。」と思う話だったので、そちらを紹介したいと思います。

今の大学生は、親との絆が強く、交流が活発的ではないそうです。
大学で友達ができなくて、なんとなく挨拶をする人はいるけれど、人間関係が深まらない。
いつも一緒にいる友達でも、家族構成やどういう事を考えているのかとか、どこの高校出身なのかなどを知らないまま卒業していく。
繋がろうと思っても、その行動が相手にとって嫌だったらどうしようと思って一歩踏み出せないという、状態になっていると話されていました。
なので、佐藤優さんが交流を深めようとしても、昔みたいに2、3回飲みに行けば心を開けていたのに、今は半年くらいかかると話されていました。

僕はこれに関して、親との絆が強いのは、大人全般に対して不信感があると考えています。
それは、まずは一番近い親が、近くにいないことにあるのではないかと思います。
2015年頃に「子育てしていても、趣味をして楽しんだっていいじゃない。」という言葉が頻繁にメディアで使われてました。今でも他のジャンルでこの手の手法が使われていますが、その時には必ず芸能人が出てきて、その流れに乗っている話をします。当時だったら、「趣味を我慢する必要なんてない。」「お母さんだって美しくあろうとしていいんだ。」という意見を沢山の芸能人が発信していました。
それは一理あるのですが、当時社会人になりたてだった僕は「間違った方向に進む。」と直感的に思いました。

時間は24時間と決まっていて、起きている時間はだいたい16時間です。
その決まった時間の中で、趣味に時間を使った場合、何かの時間が減ります。
時間だけではなく、何かをするということは体力や集中力を使って疲れますので、他のことは確実に疎かになります。

また、その頃から共働きがさらに活発化しました。
働けばご褒美で何か買いたくなる傾向があります。
共働きが増えたことと、社会の空気が「子育てをしながら趣味をしていいじゃない。」という空気感になっていたこともあって、大人は子育てをしながら、働きながら、趣味をするようになりました。

すると、家事が疎かになりました。
便利グッズや時短料理が流行ったように、家事を出来るだけパパっと済ませるようになりました。
趣味に時間を使いながら生活のやりくりをどうするのかについても発信されていれば、バランスを考えれたのかもしれませんが、今の現状をみると、家事の時短で帳尻を合わせているように思います。
子供からすれば、バタバタ忙しい親に、なかなか相談はできないです。
会社でも忙しい上司よりも、暇そうな上司の方がなにかと相談しやすいように、家にいる大人が、仕事で趣味で忙しいとなれば、子供は悩みの相談をできずにモヤモヤした気持ちが溜まっていきます。
これは僕も子供の頃に感じていました。

では、家がダメなら、外の大人に相談するという手があります。
つまり、学校の先生です。
しかし学校の先生といえば、2007年にモンスターピアレントという言葉が使われ、2012年以降から体罰問題が取り上げられて、先生は自由に行動できなくなったのではないかと思います。ルールに縛られた先生に相談をしても、先生は何も出来ないでしょう。
「家の相談に対して変にアドバイスをすれば、親からクレームが来るかもしれない。」という不安があっては、先生は相談に乗れず、曖昧な返事しか出来ないので、子供からすれば「先生は相談できる相手じゃない。」という判断になるでしょう。
中学生高校生という思春期真っ只中で、相談できる大人が周りにいないのが、今の現状ではないでしょうか。

佐藤優さんと同志社大学の学長との話の中で「家族がギリギリのセフティーネットになっている。」と話されていました。
これは親との絆が強いのは、親と親密なわけではなく、この関係が切れたら頼りの綱がなくなるという不安から、絆が強くなっているのではないかと思います。
親が自分勝手でも、家の外の世界で自分のことを大事にしてくれる人がいれば、思春期の頃なら親はほっといて、そういう人と仲良くして、親離れしていくことができるようになる可能性もあるはずです。
しかし先生をはじめ、外の大人は親以上に相談に乗ってくれそうにないので、それゆえに親との絆が深くなっているのでしょう。
これも、僕の身の回りでそう感じることがあります。

だから、今の大学生は親に頼み事ができないそうです。
国家公務員の試験勉強をするなら、バイトを減らさないといけない、予備校に通わないといけないのですが、佐藤優さんが「その分の資金援助を親に相談できないのか?」と聞けば、大学生は「親に迷惑をかけたくない。」と返事するそうです。
この感覚は、ギリギリのセフティーネットの親に迷惑をかけて嫌われたくないという気持ちがあるのでしょう。

そして先生が頼りにならないことは、社会に出ても同じような状態になっています。
僕が新卒で入った会社では、上司は忙しくていつも余裕がありませんでした。
営業で入社した僕は、配属先の人員が足りなかったこともあって、すぐに取引先が割り当てられて、研修はそこそこに本格的に営業の仕事が始まりました。体で覚えていくスタイルは好きな僕でしたが、まだ新しい仕事に慣れていない新入社員に、先輩は気遣うのではなく、自分の仕事を手伝えと言ってきました。
新入社員の仕事を先輩が手伝うのではなく、まだ慣れていなくて必死に1つ1つ覚えようとしている新入社員を残業させて、自分の仕事を手伝わせて、自分はタバコを吸いに行っていました。
そしてたまに「最近、どうや。シンドいことないか?」なんて僕に聞いてきていました。
こんな関係で、相談できるはずがありません。
昔の忙しくてバタバタしているけど、失敗をすれば上司が責任を持ってくれるという安心感も、今の会社にはないでしょう。
こういった会社での上司と新入社員との関係は、今の学生の心境に近いものがあると思います。

佐藤優さんと同志社大学の学長との対談で、「もっと人に頼っていいんだと言いたい。」というような発言をされていました。
これに関して、今までは大人の行動の部分を問題視しましたが、今の子供達から見て相談出来ないのは、もう一つ理由があると思います。

それは子供からみて、大人が同じに見えるのではないかと言うことです。
体罰問題が話題になって以降、褒めて伸ばす教育が流行りました。
厳しく指導するのではなく、優しく注意するのです。
時差で、親と子供との関係も指摘され、暴力を振るってはいけないと家庭内暴力も問題になりました。
そりゃ、暴力はいいのか?と聞かれば、誰だってダメだと答えるでしょう。

ですので、体罰や家庭内暴力が問題になったのはわかるのですが、その時に「なぜ手をだすことになったのか?」についての議論はなかったのでしょう。
「思わず手が出た。」というように、手が出る時には感情が先にあります。
子供のことを思っての感情や、虫の居所が悪いときの八つ当たりも含めて、手が出る時には感情があります。
子供は日本語が達者ではないので、言葉で説明してもうまく伝わりません。
子供に伝わるのは、感情です。
手が出た時、子供には手を出した大人の感情が伝わっているのです。

これは僕自身も経験があります。
僕が子供の頃はビンタなんて当たり前でしたので、よく親からも先生からもビンタされていましたが、そのビンタは僕のことを思ってビンタしているのか、自分の無視の居所が悪くて八つ当たりでビンタしているのかは、分かっていました。
子供には、「あれは危険だからダメだよ。」という言葉は伝わらなくても、感情は伝わります。
その感情から、危険度を察知することができるのです。

手を出すことは、その1つの手段であり、最終手段のようなものでしたが、それが禁止になって、子供は感情を知る機会が減ってしまいました。
ビンタされたり、ガミガミ怒られていると、「ああ、この人はまた八つ当たりしてる。」とか「立場上怒ってるだけなんやろうな。」とか「僕のことを考えてくれている。」ということが伝わってきますので、その伝わったシグナルから、信用できる大人と信用できない大人に振り分けることが出来ていました。

しかし今はみんな怒らず、暴力を振るわずで、感情がわからない大人ばかりです。
なので、信用できないし、みんな同じに見えるのではないかと思います。

子供は大人を見て育ちます。
今の大人が感情を抑えて生活していれば、子供も感情を抑えます。
今の大人は子供の頃に感情を爆発していたので、いざとなれば発散できる方法を知っているのかもしれませんが、子供のころから感情を抑えて育ってしまうと、今の大人が知っている術を今の子供は知らないでしょう。

自分の趣味に走り、いつも忙しそうで、みんな同じように見えるので、大人は頼りにならないのではないでしょうか。
佐藤優さんと同志社大学の学長は“今の学生は”と発言していますが、今の学生よりもさらに10歳年上の僕の世代でもそのような状況にありました。
10年経って、僕の予想通りにひどくなってきているなと思います。
いまさら体罰解禁なんて出来ないでしょうけど、大人が感情的になることを大人が許容しないと、子供たちの心の問題はどんどん深刻になっていくでしょう。

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