化粧品研究者こまっきーの語り部屋

化粧品研究者こまっきーが普段考えていることを書き留める、日記のようなもの。

「拡がり」志向に付き合う必要はあるのか。

年末年始に李御寧(イー・オリョン)さんの“「縮み」志向の日本人”という本を読みました。
李御寧(イー・オリョン)さんは韓国人で、“「縮み」志向の日本人”は韓国人から見た日本人の特徴について書いてある本です。

李御寧(イー・オリョン)さんは、よく言われている日本人の特徴は日本人だけの特徴ではないと言います。
例えば、海藻です。
ワカメなどの海藻を食べるのは日本の文化だという印象がありますが、韓国にも海苔があるといいます。
例えば、お箸です。
箸は日本特有の文化だと思われていますが、韓国も中国もお箸の文化です。
それなのに、なぜかお箸は日本特有の文化だと思われています。
本の中ではそれ以外に、日本特有だと言われているけれど、中国や韓国にもある文化が挙げられていました。
それらは欧米から見た日本特有の文化であり、もっと近隣の国、韓国から見た日本特有の文化は「縮み」志向であると。
その「縮み」志向の例がたくさん挙げられているのが、“「縮み」志向の日本人”という本です。

これも本の中からいくつかピックアップします。
まずは、扇子です。うちわは他の国にもありました。風が欲しいときは葉っぱで仰いだでしょうから、うちわの歴史はアダムとイブまで遡るだろうと李御寧(イー・オリョン)さんは言います。
しかし、うちわを小さくしたのは日本が最初だそうです。
そして扇子が誕生したのは平安時代だと言われていますので、少なくとも平安時代から日本人特有の「縮み」志向は続いていると考えられています。

もっと身近なもので言えば、お弁当です。
僕たちからすれば当たり前の感覚なのですが、お弁当には白ごはんと数種類のおかずが入っています。
そう言えば、通っていた中学が大学の附属中学で、その大学はハワイにキャンパスがあったので、修学旅行はハワイでした。その時、キャンパスの食堂からお弁当をもらってバスに乗って観光していたのですが、お昼に公園でお弁当を開けると、白ごはんの上に照り焼きソースのチキンがドカっと乗っていて、端っこに申し訳程度の生野菜が添えてあって、驚いたことを覚えています。
白ごはんの上に、タレや汁っぽいものを乗せてしまうと、ご飯に汁が染みてしまいます。
親子丼のようにすぐに食べるならまだしも、何時間もそのままにしておくお弁当でそれは嫌だったので、20年近く経った今でも修学旅行の思い出にお弁当の記憶があるのでしょう。

どうやら、この感覚が日本人特有のようです。
お弁当の文化があるからこそ、お漬物には汁気のないものが多いみたいです。
ちなみに韓国のお漬物であるキムチは汁っ気があります。
たくあんとキムチを比べると、韓国ではお弁当文化は普及しないでしょう。

李御寧(イー・オリョン)さんは更にこのお弁当の文化が、日本人の言葉や行動に影響していると言います。
色んなおかずを縮めて、お弁当に詰める。
この文化があるから、日本人は「詰める」という言葉を色んな時に使います。
映画やドラマのクライマックスのことを日本語で“大詰め”と言い、話をまとめる時には「話を詰める。」と言います。
普段何気なく使っているこの言葉こそが、日本人特有であるそうです。
この本には他にもいくつか“詰める”の例や、その他にも“斬る”など色んな日本人特有の言葉の使い方が挙げられています。

扇子やお弁当に見られる「縮み」志向はビジネスでも影響されていると本では指摘されています。
世界初のポケット型ラジオを発明したのは、ソニーだそうです。ソニーは1957年3月にTR-62という小型ラジオを発売し、たくさんの人が気軽にラジオを聴けるようになりました。
ラジオを生み出したのはイタリア人ですが、それを小型化したのは日本人でした。
ビデオもそうらしいです。
ビデオカセットを生み出したのはフィリップス社ですが、それを小さくしたのがソニーのBETAやビクターのVHSだそうです。
日本の商品開発の特徴にも「縮み」志向があります。

商品開発だけではなく、会社の仕組みにも「縮み」志向があります。
今回は詳しく触れませんが会社の仕組みは茶室から来ているらしく、4畳半という小さな茶室に5人くらいがぎゅうぎゅう詰めになって茶会を開くという文化は今の会社の仕組みにも受け継がれていると言います。
松下電気の松下幸之助さんはあれだけ大きな会社になっても、中小企業的な経営を推奨していますし、ソニーの創業者の一人である井深大(いぶか まさる)さんは「会社を大きくしていいことはひとつもありません。変化をセンシティブに受け止める。大きくなったらフレキシビリティがなくなりますよ。」と話されています。

この点は他の国とは大きく違うところで、アメリカの会社を見て分かる通り、他の国では合併して会社を大きくしていく傾向があります。
今でもP&Gグループは食器用洗剤から洗濯洗剤、おむつなどの紙製品に化粧品に、歯磨き粉などのヘルスケアなどたくさんの事業があります。
ウィキペディアをみれば、買収した企業の一覧があります。
その反面、日本は会社を大きくするのではなく、子会社化する傾向があります。

“「縮み」志向の日本人”の本の中から、日本の「縮み」志向のことばかりピックアップしていますが、本の中では日本以外の国は「拡がり」志向であることが本には書いてあります。
確かに、先ほどのアメリカのビジネスを考えても会社は大きくする傾向がありますし、世界史を読めば、領土を広げる争いばかり起こしています。
日本はあまり海外進出をしていませんが、李御寧(イー・オリョン)さんは日本が「拡がり」志向の行動をした時は、どれも失敗していると言います。
豊臣秀吉の朝鮮出兵や太平洋戦争がその例です。豊臣秀吉の朝鮮出兵は、ヨーロッパからの侵略を防ぐためだと言われていたり、太平洋戦争は日本がアジアのことを考えてでた行動だと言われていますが、日本が珍しく「拡がり」志向になったときは確かに失敗しています。
「拡がり」志向になった真意はさておき、李御寧(イー・オリョン)さんが指摘するように「拡がり」志向は日本人には向いていないのかもしれません。

李御寧(イー・オリョン)さんの“「縮み」志向の日本人”を読むと、自分たち日本人には当たり前過ぎて気づけていない日本人特有の文化に気づくことができます。
読んでいて、「これは韓国でも欧米でもない感覚なのか。」と当たり前の部分で驚くことが沢山ありました。

この本を読むと、日本は「拡がり」志向には向いていないことが分かります。
それはつまり、欧米の行動と比較することは、李御寧(イー・オリョン)さんから言わせれば失敗に繋がる思考です。

ニュースやSNSで政治のことを見ていれば、すぐに今の日本と他の国と比べられます。
良いところを比べても誰も見てくれないので、悪いところばかり目立つのですが、その批判は「拡がり」志向が多いように思います。

今年からアメリカの大統領はトランプになるわけですが、トランプが言うアメリカ・ファーストの意味を孤立主義だと考えて、一種の鎖国に近いような意味だと捉えている人がいました。
僕も最初はそのように思っていて、アメリカは世界から撤収するんだと思っていましたが、佐藤賢一さんの“開国の使者;ペリー遠征記”を読んで、そうではないと考え直しました。

アメリカ・ファーストとは、アメリカが得をすることを推進し、それはペリーのように無理やり押して押して押しまくる行動になるのではないかと予想しています。
アメリカが得をすることですから、撤収するところは損だったということでしょう。
カナダとグリーンランドとパナマ運河をアメリカのものにしようとしているトランプの発言からは、決して殻に籠るようなことではないことが分かります。
こういうあたりからも、日本人は「縮み」志向で物事を考えるので、間違った解釈をしてしまうのでしょう。

「拡がり」志向であるアメリカのアメリカ・ファーストや孤立主義は、決して縮めることではなく、拡げて大きくしていくことです。
それはバイデン政権のアメリカとはやり方が違うだけで、「拡がり」志向に変わりはないと思います。

おそらく、SNSはトランプ好きが多いので、トランプの行動を見て、日本の政治を批判する声は大きくなるでしょう。
「アメリカは変わったのに!」「他の国ではトランプに付き合って・・・」と批判の声が聞こえてきそうです。
元に、仮想通貨に関してあまり関心がない政府に、「アメリカ政府はこれからビットコインを買っていくのに・・・」と批判しています。
そのアメリカの影響もあって、中国やロシアは仮想通貨の規制を緩和したので、余計に日本はダメだと思われています。
しかし、今まで禁止していた国がなぜ緩和したのでしょうか?
僕はそれが気になっています。

バイデンの時には「アメリカの言いなりになりやがって。」というくせに、トランプが選挙に勝った後は「トランプに会えない石破さん。」と批判していました。
アメリカべったりは良くないと考えている人が、トランプに会えないことを批判しているので、「変だなあ。」と思います。

グローバル化が進んで、日本が日本らしくあることが難しくなってきました。
「海外ではもうこんな風になっている!」という言葉に流されて、海外でやっていることを真似して行った結果、「縮み」志向の日本人には生きづらくなっているように思います。
大企業が「拡がり」志向になって、中小企業がその真似をした結果、中小企業では無駄なやり取りが増えて面倒なことになっています。
そもそも日本は「拡がり」志向に付き合う必要はあるのでしょうか。
今でも日本の社会がうまく行っていないことには、「拡がり」志向が影響しているのではないでしょうか。

政治とか社会とかを考えるには、李御寧(イー・オリョン)さんの“「縮み」志向の日本人”の本から、当たり前だと思っていた日本人特有の感覚を知ることから初めてみるといいかもしれません。

化粧品研究者こまっきー

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