僕は今が安く作ることの限界に来ているのではないかと感じています。
それは、かつては“ものづくり大国”と呼ばれていた日本を振り返ってみると分かります。
明治以降、外国から入ってきた機械を使って、大量生産するようになりました。
今では当たり前どころか、一家に一台ではなくなったミシンは、どうやらペリーが土産物として持ってきたそうです。
それから製糸工場に製油工場など、様々な分野で工業化が進んでいきました。
有名な富岡製糸場は明治初期に作られた建物です。
ペリー来航によって日本は開国し、明治が始まった後、昭和の始めまで製糸業は最大の輸出商品だったそうです。
なぜそんなに日本の製糸が人気だったのでしょうか。
それは、日本で作った方が安く作れたからです。
イギリスやアメリカよりも安く作れたからです。
富岡製糸場に住み込んで日本人に製糸の技術を伝えたフランス技師ブリューナ夫妻は、日本を安価で大量生産できる優秀な製糸輸出国に発展させることが、フランス絹織物業界に大きな利益をもたらすと期待して、技術を教えたと言われています。
その後、日本はどんどん発展していきました。
製糸業でも、輸入した機械をただ使うだけではなく、自分たちでも改良を繰り返していき、大量生産だけではなく、新たな技術を生み出していきました。
一度に大量にものが作れるようになり、新たな技術を生み出せるようになると、それまでのように“安価で大量生産できる優秀な輸出国”というわけにはいきません。
輸出先の国からすれば、“安価で大量生産できる優秀な輸出国”であり続けるには賃金は安くないといけませんが、当然のように1人あたりの収入は上がっていきました。
日本人はアメリカ人ともイギリス人とも違う視点で改良していったので、日本独自の生産技術が生み出されて、“安価で大量生産できる優秀な輸出国”という立ち位置から抜け出しました。
“ものづくり大国”と呼ばれ、“メイドインジャパン”が付加価値になり始め、日本人の給料もアメリカやイギリスと肩を並べるようになると、日本は海外でものを作るようになりました。
中国やシンガポール、タイなどに拠点を置いて、大量生産するようなものは海外で作るようになりました。
アメリカやイギリスが日本を“安価で大量生産できる優秀な輸出国”に発展させようとしたことと同じ流れです。
すると当然、日本がそうだったように、中国なども“安価で大量生産できる優秀な輸出国”の立ち位置から抜け出す時はくるでしょう。
15年ほど前までは、中国製の服は買ったばかりなのにシャツのボタンがすぐに取れるくらいいい加減なものでしたが、今はそんなに悪くありません。
もはや日本製の値段の高さの理由が分からないくらいに、中国製の縫製は良くなっています。
テレビやパソコンなどの機械も、昔はソニーなどの日本製が世界中で使われていましたが、今は中国の安いテレビやパソコンと値段差ほどの違いを感じられないので、日本でも中国製のテレビやパソコンが使われるようになりました。海外でもホテルにおいてあるテレビは昔はソニーなどの日本製だったそうですが、今は中国製になっています。
日本が明治に製糸業を始め、あらゆる分野で安価で大量生産国として発展した後、独自の技術開発をして、給料が上がり、“安価で大量生産できる優秀な輸出国”から抜け出したように、中国なども同じように抜け出していくでしょう。
それはそろそろなのではないかと思います。
化粧品の容器といえば、韓国は有名です。
日本製は高いけど、中国製はまだ不安がある。そんな中、その間の存在が韓国製です。
値段も品質も日本製ほど高くはないが、安い中国製ほど品質は悪くない韓国容器は、ここ10年でどんどん良くなっていきました。
いまでは容器ではなく、韓国コスメが人気なように、クッションファンデーションという韓国独自の商品が生み出されたように、韓国は“安価で大量生産できる優秀な輸出国”から抜け出し、独自の容器を開発するようになりました。その頃から韓国容器の値段は上がりました。
一部の容器は、日本製よりも高いです。
化粧品業界では、容器だけではなく、原料なども中国製の品質が上がってきています。
品質が上がってきたところに、物価高で原材料のコストカットをしなければいけない中、中国製の需要は今までよりも幅広く増えています。
この流れを見ていると、近いうちに中国は“安価で大量生産できる優秀な輸出国”から抜け出すでしょう。
すると、今はまだ“ディープシーク”のように、どこかの国が作ったものを安く作ることが得意ですが、数年も経てば中国独自の技術が生まれ、それが世界で注目されて、給料は上がっていくでしょう。
給料が上がれば、中国製は高くなります。
すると、中国はどうするのでしょうか。
今までのアメリカやイギリスや、日本がやってきたように、海外に拠点を置くのでしょうか。
あり得るとすればアフリカですが、アフリカは近年の天候があまりよくなく、夏が暑すぎてアフリカから出ていく人が増えるのではないかと言われていますので、“安価で大量生産できる優秀な輸出国”探しは中国で止まるのではないかと思います。
現在、“安価で大量生産できる優秀な輸出国”探しをした国はどうなったのかというと、技術者が減っていきました。日本でもエンジニア不足が話題になっていますが、アメリカはもっと酷いそうです。最近日本でも投資などのお金の話をよく聞くと思いますが、アメリカはいち早く投資などに目を向けたので、アメリカではエンジニアになろうとせずに、投資などのお金を稼ぐことに目を向ける人が多くなっています。GAFAなど有名な企業はありますが、結構外国人が多く、アメリカ全体で技術者の39%が外国人だそうです。
日本は言わなくても実感があるかと思いますが、最先端と思っているアメリカすらも、こんな状況なのです。
かつては国内で大量生産をし、品質のいいものを作り、独自の技術を生み出してきた国は、いまでは技術者不足に陥っています。この状況で、新しい技術開発は難しいでしょう。
この流れをみると、中国は“安価で大量生産できる優秀な輸出国”探しはしないんじゃないだろうかと思います。
18世紀後半にイギリスで始まった大量生産は、その後アメリカ、日本、中国へと広がっていきましたが、そろそろ終わるのではないでしょうか。
化粧品研究者こまっきー
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