僕は化粧品の研究をしながら、商品を販売しています。
その前は下請けの化粧品会社の研究所で働いていました。
将来は自分が研究して、良いと思ったものを商品にしたいと思っていたので、会社に勤めることは、独立に向けての修行という気持ちで勤めていました。
僕が勤めていた下請けの化粧品会社には営業がおらず、研究所の数名が窓口になっていました。僕もそのうちの1人でした。
窓口になると、依頼を受けるだけではなく、原料メーカーの人や容器メーカーの人との商談も自由にできるようになりました。
そこで、韓国の化粧品容器を取り扱う会社の社長からこんな話を聞きました。
「日本やったら、今自分が勤めている会社のことを“うちの会社”って言うやろ。でも韓国では“この会社”って言うねん。」
どうやら、韓国は社長以外は契約社員だそうです。
つまり取締役も契約社員だそうで、それゆえに“うちの会社”という感覚はないそうです。
反対に日本は終身雇用の文化がありますので、2014年に大学を卒業し就職した僕世代は、入社して数ヶ月の新入社員でも、友達と飲みに行けば「うちの会社はさあ・・・」と言っていました。もしかするとGWの時にはすでに“うちの会社”と言っていたかもしれません。
村八分にされるのを恐れるように、早く馴染もうと思うのでしょうか。
いつかは独立しようと、修行という気持ちで就職した僕には、この早く馴染もう、早くこの会社に溶け込もうとする同期についていけませんでした。
2014年の頃は、まだ終身雇用の空気が強く残っていました。
入社してすぐに辞めるのは、会社ではなく辞める人に問題があると考えれられていました。それは今でも感覚としてあるかもしれませんが、ここ数年は「早くに辞めたらダメなやつだと思われて、再就職が難しくなるんじゃないか。」という気持ちは以前よりも少なくなったのではないかと思います。
ここ数年は電車のポスターにYouTubeの広告で、やたらと転職を促す広告が多かったです。「今の会社じゃあ。」とか「3年経ったら転職。」みたいな、今勤めている会社を悪く見えるような言葉を用いたり、今の会社に不満があるなし関係なく3年経ったら転職するもんだという風に思わせるような言葉を用いていました。そこまではっきり言っていなくても、何回も聴いていれば、今勤めている会社の嫌な部分ばかりが目につき、大体そういう気持ちになるのは3年目が多いので、転職を考える人は増えるだろうなと思っていました。
2014年の頃は早く辞めてしまうことが問題だったので、「最低3年は続けよう。」という言葉が多く使われていたと思いますので、同じ3年という言葉を使っていても、かなり意味合いが変わったなと思っています。
そして今年に入って、転職の広告内容はまた変わりました。
3年とか今の会社じゃあという、転職を促すような言葉の使用が控えめになりました。
代わりに、「転職サイトとエージェント。どっちがいんだろう。」とか、「求人数の数が違う。」という広告に変わっています。
転職サイトもエージェントも僕が転職した2014年からありましたので、真新しいものではありません。ただ、転職したい人向けにどういうシステムがあるのかという紹介の広告に変わったことは、大きな変化だなと感じています。
ちなみに僕は、転職はしたい人がすれば良くて、したいと思う気持ちは自発的に起こるものであって、何かにそそのかされて転職したい気持ちになってはいけないと思います。
なので転職をそそのかすような転職サイトの広告はどうかと思っていました。
仕事をスムーズにこなすには、1年目が5人とベテランが1人よりも、ベテランが5人の方がいいです。長く勤めているから能力が比例して上がるわけではなくでも、仕事の流れに慣れている人の方が早いです。社会人歴が長くとも、会社ごとにやり方が違うので、全く同じ業界から転職した人でも会社のやり方に慣れてもらわなければ、仕事はスムーズになりません。
そして、新しいことにチャレンジするには、普段の仕事をスムーズにこなし、新しいことにチャレンジする時間と心の余裕が必要になります。
転職が多いと、ベテランの数が減り、1-3年目が増えます。
すると、新しいことにチャレンジする時間と心の余裕どころか、普段の仕事をこなすことすらギリギリの状態になります。
なので人数はいてるのに、前より増えているはずなのに、仕事のペースが前より落ちているんです。仕事が忙しいと感じていても、会社の利益がイマイチだったり、ボーナスがイマイチだと感じる背景には、社員の質と量が関係していると考えています。
だから僕は転職は少ない方がいいと思います。
殆どの人が昔ながらの日本の文化である終身雇用であるからこそ、普段の仕事をスムーズにこなすことができて、新しいことにチャレンジする余裕が生まれるのだと思います。
転職したいと思う時というのは、スキルアップしたい時と会社が嫌な時ですが、殆どが後者です。
会社が嫌というのは人間関係であったり、勤務時間などです。勤務時間が長い職場というのは今はかなり減っていると思います。嫌な人はどの会社にもどの部署にも1人は必ずいるものですので、折り合いをつけて働くか、転職するかは自分で決めないといけませんし、僕はここにつけ込んで転職を促しては行けないと思います。
転職はスキルアップしたい人がメインになれば、新しいことにチャレンジする余裕ができて、新しくチャレンジできる人材を確保することができるようになるのではないでしょうか。
とはいえ、ここ数年は転職を促していたので、気に入らなければ辞めたらいんんだという感覚の人が増えたのではないかと思います。知り合いから話を聞いていても、ここ数年はすぐ辞める人が多く、その多くが自分の思い通りにならないと感じて辞めているようです。
すると、昔ながらの“うちの会社”という感覚も薄れているでしょう。
韓国のように“この会社”と思いながら働いている人が増えているのかもしれません。
もしそれが、スキルアップをしたい人が増えたことによって起こっているなら、これから発展が見込まれそうですが、そうではないあたり、自分の思い通りにならないと考える人が増えただけかもしれません。
皆さんの周りでは“うちの会社”と“この会社”、どっちが多く使われているでしょうか。
昔はほぼ100%“うちの会社”だったはずですので、そのことを念頭に置いて話を聞いていると、社会の変化に気づけるでしょう。
そして転職サイトの広告内容が変わったように、今と1年後ではまた変わっていると思いますので、一旦いま自分周りで“うちの会社”と“この会社”の割合を調べておくと、それはこの1年の社会の変化となるでしょう。
化粧品研究者こまっきー
↓こちらへどうぞ↓