大手でない会社に、大手出身の人が転職するのがキッカケになるのか、街の中小企業にもシステム化が進んでいる。今までだったら口頭やメールのやりとりでスムーズに進んでいたものが、とりあえず書類を書くことから始まり、その書類に書いていない内容は、「書いていないから悪い。」と責任追及が出来るような形を取るようになっている。
傍から見れば「良いことだ。」と思うかもしれないがBtoBの商売は臨機応変な対応が必要になることが多いので、システム化してしまうと臨機応変は出来なくなる。実際に工場の生産までまだ日にちに余裕があっても「システム上、今から変更すると納期が伸びます。」と言われる。
システムを一度作ってしまうと、そのシステムの通りに動かざるを得なくなり、ちょっとでも入力ミスをすればエラーが出る。口頭だとニュアンスで伝えられるようなことも、システムには通用せず、システムが分かる言葉で入力しても、今度はそれを人が見るわけで、結局「これどういう事?」と他部署から電話がかかってくる。「だったら、最初から口頭でいいのではないか。」と思うことが何回もあるのではないだろうか。
顔を立てる。という事も最近は崩壊していて、部下が上司を飛び越えて他部署に勝手に相談した結果、上司のメンツが立たなくなることが度々起こる。
正月明けの挨拶まわりを部下と同行し、年明けから動き回って疲れてるやろうと、今日くらい少し早く帰ってもいいんじゃないかと思った上司は部下に「ちょっと早いけど、挨拶回り終わったし、今日はもう帰ろうか。」と言ったにも関わらず、部下はその後会社に帰った。という話があった。次の日、その事の他の社員から聞いた上司は、部下に聞くと「仕事があったから。」ということだったそうだ。上司の気遣いを無下にした部下は、今後上司との関係が改善するのだろうか。
メンツなんてつまらない。と思う一方で、長年の関係性の構築からなる上司のそのポジションがあるからこそ、仕事が上手く回ることもある。その為の顔を立てるという行為が、システム化するとちょっと変わる。何もかもに上司の電子印が必要になり、ハンコを押すからには「ちゃんと見なくちゃ。」とプレッシャーがかかる。大体のことは部下に任せていきたいのに、システムのせいで任せられず、むしろシステムのせいで余計な仕事が増えた。上司というのは余裕がないと出来ないポジションである。部下がいつでも相談出来るような余裕のある雰囲気作りが上司に必要なことだと思うが、システム化により上司の事務作業が格段に増えて、益々上司と部下の距離は遠のいた。
顔を立てる。をシステム化した結果、部下は取引先で上司の顔を立てることが出来ない。社内で学べないことを取引先で出来るはずもなく、突然の部下の発言に上司がヒヤヒヤ、取引先が苦笑い。なんてこともあるだろう。
大手出身が町工場に転職したこと以外に、システム化していないと注文が貰えないということもあるらしい。町工場にお客さんが見学しにきて、システムを構築しているかどうか、チェックするそうだ。
そもそもシステムとは、会社内を円滑に進めるためのツールで合ったはずだ。最近のシステム化はそこにシステムが要るか要らないかの判断もせずに、とにかくシステムを構築して、隣にいてもシステムを使い、仕事が遠回りになったから、仕事の効率が落ちたとシステムを見直すことがないのはなぜだろうか。
システム化によって、仕事が遠回りになり、書類が増えて手間が増えたから、見積もり上がる。なんてこともある。
システム化よりも、社内のコミュニケーションだけで会社が上手く回るなら、システムを構築する必要は無いだろう。
いくつかの工場を見学すると、社内コミュニケーションで上手くいっている工場の方が、人が安定している気がする。仕事がスムーズで融通が効く気がする。
コストが安い。これは気がするのではなく、事実だ。
システム、機械、サービス、アプリ。これらは日常を円滑に進めるために開発されてきたはずだが、果たしてどこもかしこもシステム化する必要があるだろうか?
仕事をしているのは機械ではなく、人である。
人と人である。
人はロボットではない。
そのことを今一度考えて、システム化による苦しみから抜け出す必要があるだろう。
化粧品研究者こまっきー
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