化粧品研究者こまっきーの語り部屋

化粧品研究者こまっきーが普段考えていることを書き留める、日記のようなもの。

会社に入って気付く、昭和社会の良さ

初めて入った会社は一部上場企業で、入社してから数ヶ月研修があり、部署に配属されてもまた2ヶ月ほど研修がありました。今では入社してから研修をするというのは当たり前かもしれませんが、昔は研修なんかなく、“とりあえずやってみる”だったそうです。

その“とりあえずやってみる”という昭和社会の良さを感じたのは、転職先の会社でした。自分で研究して、研究して良いものができると自分で商品を出してみたい。という気持ちがあったので、研究職でも何でも出来るようなところを探して、いわゆる町工場に就職しました。
研修なんてものはなく、「習うより慣れろ。」でとにかく手を動かして、身体で覚えていくという教育でした。メイク専門の町工場だったので、口紅の作り方を覚えて、同じ色の口紅を2回作っても殆ど色の差が出ないくらいの精度が出せれば合格で(同じ人でも大抵2回作れば微妙に色は変わります。)、合格が出れば早速お客さんの依頼の色を作っていくと、すぐに実践に移りました。実践に移るまで、ほんとすぐでした。
口紅が出来たら次はグロス、フェイスパウダー、ファンデーションと出来たら次、出来たら次で新しいことを身体で覚えていきました。研修みたいに1ヶ月は口紅と決まっていて、座学が先で実践研修がちょっと、なんてことはなく、出来たら次です。座学なんて二の次で、身体で覚えるのが先でした。

ゆとり教育世代以降は、なかなか“身体で覚える”という言葉は聞いても、体験することはありませんでした。殆どは座学が先です。アルバイトでもとりあえずお客さんの注文聞きに言って、「あー、それは◯◯って書いて、◯◯で厨房に声かけて。」なんて実践的なやり方ではなくて、アルバイトの面接の後に「次来るときまでにこれ覚えといて。」と伝票の書き方と呼び方の紙渡されます。ひどい時はテストして覚えていないと、いつまでもシフトに入れないところもありました。“身体で覚える”前に、まず座学。
そもそも、アルバイトの時間以外でメニューを覚えて、それが時給にならないのはオカシイと思いました。

思い出せば、フランチャイズの王将でアルバイトしたときは“身体で覚える”でした。餃子は「コーテル」2人前は「リャン」、オーダー通すときは「コーテル リャンです。」覚えようと紙に書こうとしたら「そんなん書かんでええ。身体で覚えて、わからんかったらすぐ聞いて。」というスタイルで、初めての“身体で覚える”スタイルにかなりビックリしました。
実践がベースだとメニューも覚えやすく、新人はわからんことが当たり前というスタイルなので、すぐ聞ける雰囲気がありました。
65歳の店長が営むフランチャイズの王将には、僕の知らない雰囲気、昭和の雰囲気を感じました。

今は人手不足なので、“身体で覚える”スタイルかもしれません。しかし、今の“身体で覚える”スタイルには「わからんかったらすぐに聞ける」体制がありません。聞こうとしても、なんか聞きづらくて、何回かは聞くけどその度に遠慮がちになり、とうとう聞くのを辞めてそれっぽいことをしてその場しのぎをします。それが1回通用すれば、人に聞くより楽なので、次もその次もその場しのぎでやりくりし、大きなトラブルが起こってから“実は・・・”となっているように感じます。

昭和社会といえば、深夜まで残業とかもっとハードなイメージの方が多いとは思いますが、平成生まれのゆとり教育世代の僕にとっては“身体で覚える”スタイルも昭和社会だと感じます。

僕が就職した町工場も新卒採用を始めて、ついには研修を作ってしまいました。新卒採用を始めるということは、そういうことになると理解しました。あのシステムの中に入ってしまえば、会社は皆同じようになってしまいます。
面白いことに研修を受けた人の方が、入社してからの成長が遅く、覚えも悪かったです。

深夜残業、オラオラ系上司など昭和社会の悪いところばかりが指摘されて、昭和社会そのものが悪いんだという風潮が広まったように思います。
まずは座学。実践は後で、一人一人の成長スピードは気にせずに皆同じ期間同じ研修を受ける。何かあったらルールで規制するのと同じ理屈です。
最近は小さな町工場にもシステムという名のルールを求め、システムがちゃんとできていないと注文がもらえないという声も聞きます。
町工場にシステムなんて必要ありません。ルールやシステムなんて作らなくても自然に回っているんです。それはシステムやルールを作らないと回らない会社よりよっぽど自然で健全な会社である証拠です。

どこの会社にも同じような仕組みを求めた結果、アルバイトしていたフランチャイズの王将も“身体で覚える”スタイルの町工場も無くなり、昭和社会の良かった部分が消えてしまいました。

消されてしまった昭和社会の中でも、あの人情味のある温かい社会は必要なはずです。

化粧品研究者こまっきー

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