化粧品研究者こまっきーの語り部屋

化粧品研究者こまっきーが普段考えていることを書き留める、日記のようなもの。

都の終焉

化粧品の下請け工場の研究所で働いていた時、最初は“同じ”ものの依頼が結構あった。
今流行っている商品を持ってきて、「これを作りたい。」という依頼が1シーズンに数社は同じものだった。他にも少し前に流行った商品を持ってくるパターンも多く、研究側としては過去に作ったことがあるものが多かった。

数年経つと「これよりもサラッとして欲しい。」という依頼に変わった。全く“同じ”ではなく、今流行っているものではあるが、それよりもちょっと手を加えたいという依頼が多くなった。
僕は「全く同じでは売れなくなったのかな。」と思った。
研究側から言うと、他社品と全く同じ化粧品を作るのは全成分をみても不可能だ。全成分は入ってる成分が書いてあるだけで、配合量は分からない。また同じ成分でもサイズや質感がぜんぜん違う原料が沢山ある。

だから“同じもの”と言われて作るものは“似せているもの”になるので、“同じ”ではない。そこは企画の腕の見せどころで“同じ”を別の良いものにすれば良いと思ったが、一昔前は“同じ”である方が売れていて、それから少しすると“同じような拘りが感じられるもの”に変わったので、依頼も「これよりもサラッとして欲しい。」に変わったのだろう。

確かに僕が就職する前の2010年位を思い出すと、とりあえずコラーゲンやヒアルロン酸配合のスキンケアが多いかったように思う。僕が就職してからの数年間の依頼はその“同じ時代”の終焉だったのだろう。

そして最近は“同じようなちょっと違うもの”で“拘りを感じられるもの”もイマイチになった。言葉遊びに愛想が尽きたのだろうか。
そこで依頼に沿って「こういうのはどうですか?」と僕から提案してみるようになった。
すると提案に乗ってくれて商品化したものは比較的売れることが多かった。
コラーゲンやヒアルロン酸が入っていれば良しの時代から、使ってみて判断する時代に変わっていったことを感じた。

“同じ”の魅力は失いつつある。
にも関わらず、金沢と東京間の新幹線開通に合わせて改修された金沢駅は他と“同じ”だった。
“同じ”の安心感は平成の時代の産物だ。
平成時代の“長いものに巻かれていれば安泰”による“同じ”の魅力であり、時代はもう変わっている。

みんながゴールデンタイムに同じ番組を観て、次の日その番組の話題で盛り上がっているようなことはもうない。同じYouTubeでも皆観ているチャンネルが違う。

“同じ”の大きな力は失われつつあるのに、金沢駅の見た目は残念だった。
金沢は加賀百万石のイメージで駅の周りの雰囲気を作ったら良かったのにと思った。
金沢に着いたときに「おお、金沢や!」と感じれたほうが楽しいのに。

思えば大阪も京都も博多も駅の見た目は、みーんな“同じ”だ。
大阪駅の改修をしたときは「京都のパクリ」と言われた。
どれもシルバーで、どの大都市の駅または駅周辺も見た目が“同じ”。

東京と“同じ”ようなことをしていては、“同じ”パワーが衰えれば“同じ”ところは力を失っていく。特にこれからは地域の雰囲気を大事にして、その雰囲気や文化に合わせて街づくりすることが重要となるだろう。

東京都に右へ倣えという“同じ”は終焉を迎える。
“同じ”ところが多ければ多い地域ほど、この後の混乱は大きくなるだろう。

化粧品研究者こまっきー

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