化粧品研究者こまっきーの語り部屋

化粧品研究者こまっきーが普段考えていることを書き留める、日記のようなもの。

子供の頃からメールが苦手だった。

僕が子供の頃は小学生で携帯電話を持っている子は殆どいませんでした。
たぶん、携帯電話の時代はその後もそうだったんじゃないかと思います。

中学生になると、ちらほら持ち始める子がいて、中学2年生のときにはメールをすることが流行りました。
女子と仲良くなるには、まずは携帯電話を持たないといけなかったです。
そして、メールアドレスを交換して、毎日メールをしないと仲良くなれませんでした。

学校で喋って仲良くなるのはダメなんです。
クラスや学年には男女ともに上下関係がありましたから、グループのボスや取締役の子たちより女子と仲良くしていると、睨まれてしまいます。
最悪の場合、仲間はずれにされてしまいます。
なので学校で会っていない、夜の時間でメールをして仲良くならなくちゃいけませんでした。
その夜の時間の話を学校でするという感じでした。
僕はそこまでそういう子たちと仲良くなかったのですが、教室の後ろの方から聞こえてくる話はそんな感じでした。部室で誰と誰が付き合ったなんて話があり、僕が驚くと「え、知らんかったん?」と、いわゆる陽キャラグループに所属している子は僕の驚きに驚いていました。
彼からすれば、普段教室で話している内容ですので、みんな知っていると思っていたのでしょう。

中学2年生のとき、僕は興味本位に陽キャラグループに所属しました。
すると、学校ではどのグループに所属するかでモテるかモテないかが変わるという意味がわかるくらいに女子とたくさんメールアドレスを交換しました。
一夜で何人もの女子とメールしていたわけですが、女子側からすれば、もっと沢山の男子と毎日メールしていたことでしょう。
男子が先輩女子とメールすることはあまりなくとも、先輩男子は後輩女子のメールアドレスを部活の後輩伝いで入手し、メールをしていました。

夜のメールになると、みんな饒舌になります。
誰が誰を狙っているとか、そういう話は教室よりも夜のメールの方が情報が早いです。
「○○って好きな子おるん?」と女子が聞いてくる時は、その子もしくはグループの誰かが○○のことが好きで情報収集しているわけです。
「わたしが好きなわけではないよぉ。」と言いながら、その子が好きだったりします。
今思えば、メールは気になる子とだけすればいいんじゃないかと思うのですが、当時は周りに自分の好きな人が誰なのかバレないようにとか、情報収集とか、夜のメールはそういうものだから色んな人とやり取りしているとか、このグループから仲間はずれにならないようにとか、色んな意図はあったと思います。

メールをやってみると、これが非常にめんどくさいのです。
僕は中学2年生のクリスマスの日に携帯電話を手に入れたので、中2のときは殆ど父の部屋にあるパソコンでメールのやり取りをしていました。
パソコンで自分のYahooメールを作成して、父の部屋のパソコンでやり取りしていました。
プライバシー保護で、毎回ちゃんとログアウトをします。
今のスマホみたいに、IDとパスワードを暗記してくれるシステムは当時はありませんでした。

スマホのアプリではGmailやYahooメールも新しいメールが入ると通知がきます。
インターネット上でのパソコンのメールは更新しないと新着メールの確認ができませんので、気になるやり取りの場合は何回も更新していました。
ずっとパソコンに張り付いている僕を父が急に怒ったこともありました。
すると父の部屋から出て行かないといけませんから、メールのやり取りはそこまでです。

最初は面白いと思っていたメールも、携帯電話を持つと変わりました。
父の部屋のパソコンと違って、ずっと手元にありますから、メールが来れば気になりますし、返信すればどう返ってくるのかが気になります。
自分の部屋には自分しかいないのに、自分のやるべきことが全く進みません。
やるべきことが終わらないので、やりたいことは始まりもしません。
ずっと机の上に宿題が同じページを開いたまま止まっています。
自分しかいない空間なのに誰かに支配されているようでした。

メールをすることが急にめんどくさく感じました。
そして「気になる子以外とメールする意味あるんか?」と感じてきます。
メール界隈でしか聞けない情報や、色んな子とメールをしていないと学校で陽キャラグループについていけないことや、メールが来たら返さないといけないと気持ち、色んなことがどうでもよくなりました。
教室では一言も喋ったことがない女子とも、帰り道が一緒で乗る電車の車両が違うだけの女子とも、教室では話さないのに、メールで会話するというのは違和感しかありませんでした。

中学の社会構造はまさに“海を制するものは世界を制する”ならぬ“メールを制するものは学校を制する”でした。
自分が興味がなくとも、好きな女子の近くにいる女子と仲良くメールをして、好きな女子の情報を入手する。誰が好きかがわかってしまうと、警戒されてその子の情報が入ってこなかったりします。他にもその子のことを好きな男子がいると、偽情報を流してくる可能性もありました。色んな女子とメールをして、違う人を好きと思わせといて本命を隠しながらメールをしていて、「どうやって本命の女子と付き合うか?」と考えていたあの戦場はまさに、情報戦でした。
「あいつに興味はない。」とか「いやー、あいつは辞めといた方がええで。」なんて言っていた男の子が、気づけばその女子と付き合っていたなんてことはよくありました。
時には自分のグループの男子たちも騙していましたから、認知戦と言っても過言ではないでしょう。

高校生になると、色んな子とメールすることはなくなり、特定の子とだけになりました。
付き合っている子、教室でも話す子です。

大学生になると、女子と付き合ったらウィルコムという通話し放題の携帯電話を持たないといけなくなりました。ウィルコムではネット環境はありませんでしたので、ウィルコム1台では携帯電話の役割を果たせません。かといって、ドコモなどの携帯電話で通話し放題にすると、ウィルコムよりも高くつきました。
月3000円でウィルコム同士は通話が無料というのは、当時の通話料金では破格の安さでした。
携帯電話2台持ち生活がはじまりました。
通話時間を気にすることがなくなり、通話し放題の携帯電話を新たに契約したなら、通話しないと損です。

するとまた、夜の自分の時間が無くなりました。
メールは送ったら返信が返ってくるまで時間がありますが、電話はそういうわけにはいきません。
要件だけ話して数分で終わっていた通話は、1時間以上になりました。
夜10時に電話し始めると、11時まで電話をしているわけです。
これも最初は楽しんでいましたが、やがて億劫になっていきました。
「今日は電話出来ひん。」とメールすることが何日か続くと「好きじゃなくなったん?」というメールが返ってきました。
中学のメールの時の二の舞です。

自分しかいない部屋に、自分の好きなことを好きなタイミングですることができず、まるで教室にいるかのような空間に自分の部屋がなってしまうのが嫌でした。
自分しかいないなら、自分のことに集中していたいです。

仕事ではメールも電話も使います。
誰ともコミュニケーションを取りたくないわけではなく、度がすぎるとしんどくなるだけです。
いつまでもメールに返信していたり電話にでていると、また嫌になってしまうので、仕事の返信は何時までと決めています。

ラインのテレビ通話は相手がオンにしても自分は非表示です。
言われたらオンにしますが、顔は出さずにカメラは天井を向いています。

やっと慣れましたが、オンライン会議も苦手です。
特に仕事でお付き合いのある人ならまだしも、初めての人とのオンライン会議は距離感が掴めないです。
反応がないと困ると思っているのか、大袈裟に「うんうん。」と頷かれると嫌になります。
ちゃんと聞いているなら、大袈裟なリアクションじゃなくて、的を得た質問をしてほしいものです。たいてい大袈裟なリアクションをする人は話を聞いていません。

僕は自分の部屋で自分のことを考えれない空間になることがすごく嫌でした。
今ではラインのテレビ通話を自分はオフにするように、これ以上入り込めないようにしています。
仕事ではすぐオンライン会議をしようとする人がいます。
オンライン会議にした方がいい話なのかと思いきや、大抵は電話で済むような内容で、それがまたオンライン会議になると話が長引くのです。
これは堪ったもんじゃないので、オンライン会議という言葉に敏感になっています。
資料を見せないと説明できないような、電話かメールで済まないような内容なら、オンライン会議にすればいいのです。
実際に会えば、その場は相手との空間になりますから、やっぱり対面が一番ホッとします。

今の若い子たちには、自分だけの空間という存在を認知しているのでしょうか。
自分だけの空間の存在を知らなければ、自分の部屋にいても、誰かと繋がっていることが当たり前だと感じるでしょう。
誰かと繋がっていないと焦るかもしれません。
しかし目の前には誰もいないのですから、自分だけの空間のはずです。
自分だけをみて、自分のことを考えていればいいはずです。

中学2年生のころに「嫌やな。」と思ったメールのあの感覚は、大学生になっても大人になってもずっと残っています。
デジタル空間が発達すればするほど、自分だけの空間のはずが、誰かに支配されやすくなっています。
今や簡単に誰かと繋がれるようになっているからこそ、自分だけの空間は死守するべきではないでしょうか。

化粧品研究者こまっきー

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